選挙業務から育児支援まで!自治体の業務改善&市民サービスの利便性をUPさせたトヨクモkintone連携サービスによるDX成功事例
従来の紙中心の業務から脱却し、業務効率化と市民サービス向上を目的にkintoneとトヨクモの連携サービスを導入された下妻市役所様。Excel業務での限界や無駄な残業、若手職員の退職といった課題を抱えていましたが、「自治体DX応援プログラム」によりkintoneを1年間無料で利用できるキャンペーンをきっかけにトライアルを実施。
研修やサポートを重ねるとともに、『FormBridge』『kViewer』『PrintCreator』を活用し、アンケート業務や申請手続き、庁内業務の効率化に成功し、業務時間の削減やコストカットを実現しました。
同市のDX推進課に所属する小林 正幸氏と健康づくり課の保坂 千鶴子氏にお話を伺い、トヨクモkintone連携サービスで実現した具体的な改善事例と活用法についてご紹介します。
▲(左から)DX推進課の小林氏と健康づくり課の保坂氏
kintone導入のきっかけは紙での煩雑な業務や若手職員の退職増
今ではさまざまな業務をkintoneで行う下妻市ですが、2021年度まではDXがまったく進んでいなかったといいます。
「業務のほとんどが紙で行われており、今考えると無駄な残業も数多くありました。しかし、新しいシステムを導入するにはお金と時間がかかることから、なかなかDXが進まず、Excelでなんとか業務をこなす日々が続いていたのです。実際に若い職員が退職するケースも目立った時期でした。
こうした状況から、職員自らがアプリを開発できるノーコードツールの必要性を感じ、さまざまなツールを探していたところ、kintoneに出会いました」(小林氏)
導入の際、当時行われていたサイボウズの自治体DX応援プログラムに応募したところ、見事に採用され、kintoneを1年間無料で使うことができたそうです。そこで使い勝手や効果などを見極めたうえで、2023年6月より本格導入に至ったといいます。
まず取り組んだのが、庁内での照会・調査をkintoneで行うことでした。
「どこの自治体でも同じですが、庁内のみならず、国や県からの調査やアンケートのとりまとめが日々行われています。その調査を庁内で行う際、これまでは回答に必要なExcelを作成し、それを各部署にメールで送信し、返信されたものを取りまとめるという作業が必要でした。
しかし、その都度メールを開かなくてはいけませんし、Excelでの資料作成や取りまとめにもかなりの時間を要します。つまり一つのメールに3分かかるとすれば、30回同じ作業を行うと90分の無駄が生まれてしまいます。
その点、kintoneでアプリを作成して掲示板にリンクを共有すれば、回答結果が半自動的に蓄積されるので、とりまとめを依頼した職員は結果さえ見れば目的が達成できます。現在は担当部署がアプリのリンクを貼り付け、それに回答するという流れが全庁的に浸透しています」(小林氏)
▲Garoonの掲示板に掲載された調査の呼びかけ。該当するkintoneアプリのURLを共有し、回答を促す文言となっている。
FormBridge、kViewer、PrintCreatorで行政手続きをさらに効率的に!
現在ではFormBridge、kViewer、PrintCreatorを導入し、さらに業務効率化を加速されている下妻市役所。
ここからは、代表的な活用事例についてお話を伺いました。
【導入事例1】FormBridgeとkViewerで選挙の投票速報集計作業をより迅速&簡単に!
下妻市では選挙の投票速報の集計作業としてFormBridgeを活用しています。これまでは各投票状況をメールで本部に送信、その内容を本部がExcelに転記するという流れで進めていました。しかし、30箇所ある投票所から決まった時間に送られてきたメールの内容を手入力するという作業は、時間がかかるだけでなく転記ミスの可能性もあり、改善の余地がありました。
「kintone導入後はFormBridgeで各情報を入力する流れに変更しました。kViewerルックアップを活用することで投票所番号を入力すれば投票所名と担当者名が自動入力されるようになっています。これにより、投票所の職員の作業はかなり楽になったと思います。
またkintoneに登録されたデータはCSV出力した後に貼り付けるだけで完成するので、転記作業がゼロになったことも嬉しいですね」(小林氏)
さらに令和6年10月に執行された衆議院議員総選挙からは、最終確定の報告にもFormBridgeが活躍しています。
「最終確定については、一番多い投票所で6つの報告が必要となります。そのため、投票者数が同じものについては条件分岐を利用することで入力を省略するなど、報告者への入力を最小限にする工夫をしました。
その分、見えないフィールドでは関数を用いており、かなり時間をかけて作成しました。ただ、これさえできれば今後の選挙は転用するだけなので、集計作業全体作業でかなり工数削減できると考えています」(小林氏)
▲FormBridgeで作成した投票速報アプリフォーム画面。
▲FormBridgeで作成した投票速報[最終]アプリのフォーム画面(左端)と、FormBridgeの条件分岐設定画面(中央および右端)。選挙形態に合わせて表示するフィールドを細かく条件分岐させている。
※kViewerルックアップの利用については以下をご参照の上ご利用ください。
https://guide.kintoneapp.com/formbridge/important-note/
【導入事例2】FormBridgeで出産・育児支援の給付金申請!煩雑な業務とかさばる郵送コストを軽減!
下妻市では、すべての妊婦や子育て家庭が安心して出産・子育てができるよう「下妻うえるかむベビー応援事業」を行っています。これは妊娠届出時から出産、育児まで切れ目のない伴走型相談支援と、経済的な負担軽減を図る経済的支援を一体的に行うものです。下妻市では、この申請にもFormBridgeを活用しています。
「本事業は2023年2月に国の事業としてスタートしましたが、当時はコロナ禍でワクチン接種に人員を割いている状況だったため、圧倒的に手が足りない状況でした。従来の申請方法だと対象者に申請書類を送付、申請書の受付、受付簿の作成など時間や手間がかかるのは想定内であり、限られた人数で業務を遂行するためには電子申請が不可欠でした。
効率性を考え、ツールとしてFormBridgeを使用し、作成したフォームから申請いただく流れを採用しました」(保坂氏)
ギフト申請フォームの活用事例
「申請いただいた方には『出産応援ギフト』として5万円を給付していますが、母子健康手帳発行時に申請していただいています。
まず出産までの妊娠経過や健康管理の重要性、栄養などについて助産師や保健師などから説明を行い、その後母子健康手帳発行と同時に申請まで行ってもらう流れです。出産後は赤ちゃん訪問時にご自宅から対象者に『子育て応援ギフト』5万円の電子申請をしていただいています。
▲下妻うえるかむベビー応援事業申請の流れ(出典:下妻市役所HP)
申請には入金先の銀行の通帳やカード情報が必要になりますが、忘れた方は申請フォームの二次元バーコードをお持ち帰りいただき、ご自宅で電子申請していただいております」(保坂市)
▲出産応援ギフト申請フォーム。後日連絡ができるようにメールアドレスなどの情報も取得している。
申請対応は、母子健康手帳についての説明を行った助産師や保健師がそのまま行います。それぞれITについてはそれほど詳しくないものの、これまで流れがわからずに困ったことや、質問に窮したことはないといいます。また、利用者も申請が手軽で便利だと話しているそうです。
「FormBridgeを採用した結果、一人当たり656円(2024年9月まで)かかる郵送費を抑えることができました。現在の対象者は約200名程度なので、単純計算で郵送費だけでも131,200円の費用削減につながっています。
また用紙の印刷費やインク代等も抑えられたほか、返信された申請書の内容をExcelに入力する作業がないなど、コスト面および業務効率面での効果を感じています」(保坂氏)
アンケートフォームの活用事例
また下妻市では妊婦の方への伴走型相談支援の一環として、妊娠7〜8ヶ月の際に状況の確認やお悩みがないかなどのアンケートも行っています。こちらの業務にもFormBridgeを導入しているといいます。
「妊婦さんにとって、わざわざ屋外にあるポストまで行ってアンケート回答用紙を投函するというのは、かなり大変な作業です。それなら、スキマ時間でさっと回答できてしまうFormBridgeのほうが便利だと思いますし、実際にそういったお声も多数いただいております」(保坂氏)
アンケートフォームは電子母子手帳「ママサポしもつまアプリ」からお知らせを一斉配信したり、メッセージアプリとメールで個別に案内し、回答を促しているそうです。
▲下妻うえるかむベビー応援事業申請フォーム画面。ラベルを利用して、事業内容や問い合わせ番号を記載した画像を掲載している。
▲フォーム画面をスクロールしていくと名前や住所など必要情報入力画面に遷移する。
その効果は回答率にも現れています。
「アンケートの回答率は一般的に30%程度と言われていますが、大部分の対象者にご回答いただいています。書面で提出するのは面倒なんだなということがよくわかりました」(保坂氏)
「この事業に関わっているのは、妊娠出産・育児での悩みや疑問に対し、面接や電話で相談に対応したり、パパママクラスの運営や赤ちゃん訪問、乳幼児健診なども行う専門職の職員です。各担当者が業務を自分事として捉え、妊婦さんにとって便利で、自分たちも本来しっかり行いたい業務に取り組むためにはどうすればいいんだろうと考えてくれた結果、FormBridgeの活用や業務改善につながっています。こうした流れは私たちとしてもとてもありがたいですね」(小林氏)
【導入事例3】PrintCreatorでシニア世代スマホ購入補助金の申請業務を効率化!10分の作業が数分に
下妻市ではより多くの方がデジタル化されたサービスを利用できるよう、市内に住む65歳以上の方を対象に、新たにスマートフォンを購入する際の補助金を最大2万円まで交付しています。その際の申請にPrintCreatorが活用されています。
「申請の際には対象者の方に窓口までお越しいただき、制度の説明などを行ったあとに職員が情報を入力しています。事前に住民の情報や金融機関コードを管理するマスタアプリを用意し、管理番号等を入力すれば、ルックアップで必要な情報が申請フォームに自動表示されるため、必要事項を手間なく入力できるよう工夫しています。
PrintCreatorを活用することで、申請内容から受付票や申請書を作成できるほか、交付決定通知や宛名シールもこのアプリ上で出力できるため、申請から交付までの作業をアプリ1つで行うことができ、かなり手間を省くことができています」(小林氏)
▲スマホ購入補助 申請管理アプリ画面。ステータスで進捗状況が確認できる他、PrintCreatorの出力ボタンで受付票等を簡単に出力できる。
▲PrintCreatorで出力された受付票および交付申請書兼請求書。
審査状況はkintoneのステータス変更で確認できるなど、各申請の進捗管理もkintone上で完結できているそうです。
「申請ごとにExcelやWordで書類を作成するのは面倒な作業なので、kintoneやトヨクモkintone連携サービスがなければ少なくとも10分はかかっていたと思います。その点、今は必要最低限の情報だけを入力すればよいので、数分の作業で完了することができます」(小林氏)
【導入事例4】FormBridge×kViewerのMyページで入札参加資格審査申請の効率化に挑戦中!PrintCreatorで申請書の出力も
FormBridgeを中心に、さまざまな業務にトヨクモkintone連携サービスをご活用いただいている下妻市役所ですが、kViewerについてはこれまで、kViewerルックアップとしての活用にとどまっていたといいます。しかし、kintoneアカウントを持たない人にも情報を共有できる点をもっと活用したいと、入札参加資格審査申請での導入を準備中だといいます。
「FormBridgeで作成したフォームから申請を行ってもらうと、kViewerを利用して申請者ごとにMyページビューが発行されます。Myページでは入力した内容をもとにPrintCreatorで申請書を出力できるほか、情報の追記や修正なども、期限を設けてこちらで行っていただけます」(小林氏)
▲FormBridgeで作成した入札参加資格審査申請アプリ。
▲申請後にkViewerのMyページビューへのリンクが表示される。
▲Myページにアクセスすれば、右上に表示されたボタンから申請内容の修正や申請書の出力が行える。
▲Myページビューの画面上からPrintCreatorで出力された申請書。
本格導入は2025年2月からということで、効果はこれからではあるものの、1,000件以上の申請がある入札参加資格審査の業務が楽になるのではと担当課では期待しているといいます。
【導入事例5】kintone×PrintCreatorで異動後のログイン情報を簡単共有
自治体職員の方のお困りごとの一つとして、異動に伴う各システムのログイン情報等の変更が挙げられます。下妻市役所では職員ごとのレコードに、所属する部署に関連するアカウントデータを集約したアプリを用意し、グループウェア上にショートカットを設けています。所属を変更すると、当該課の情報に自動的に入れ替わるように設定されており、レコードの内容はPrintCreatorで出力できるので、都度確認する手間を省けるようにしているといいます。
「各種システムのID、パスワード情報は、異動後の問い合わせの中で多く寄せられる内容の一つです。これらも、基本的にはkintoneを見れば完結できるようにしています」(小林氏)
▲PrintCreatorで出力される各種アカウント情報のフォーマット。
アプリ作成のヒントは「ちょっと便利にしていく」ことから
さまざまなアプリを作成し、業務効率化を実現している小林氏ですが、どのようなものを作るのかは「現在行っている業務をちょっと便利にしていく」ことから始めていけばよいと考えているそうです。
「アプリというと完璧なものを求める人がいますが、kintoneなどのノーコードツールはすぐに修正できるので、徐々に使いやすいものに仕上げていくイメージが大切なのではないでしょうか。極端な話、野良アプリがたくさんできてもいいと思っています」(小林氏)
さらにDX推進課では操作や作成のフォロー体制を敷いているそうです。
「kintoneはどの部署でも活用できるツールであると思っています。先ほども申し上げましたが『ちょっと便利に』のマインドで気軽にアプリ作成をしてもらい、途中でつまづいた時には私たちDX推進課がサポートを行っています。
この他、『アイデアはあるけど、アプリ作成は難しい…』という職員については、依頼があればアプリ作成も行っています。そのアプリが業務に役立ち、次第にアプリ作成の意欲やアイデアが自然と出てくるようなきっかけを作ることが、私たちDX推進課の仕事だと思っています」(小林氏)
kintoneおよびトヨクモkintone連携サービス導入にあたって、どんなアプリを作ればいいのかわからず困っていらっしゃるなら、まずは目の前のちょっとした困りごとを見つけ出し、トヨクモkintone連携サービスで少し解決していく、というところからスタートしてみてはいかがでしょうか。
記事公開日:2025年1月6日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります