リコージャパン株式会社は、1959年に設立された事務機器や光学機器を製造する株式会社リコーの国内販売会社です。ソフトウェアの販売も手がけており、これまでもkintoneを販売してきましたが、2022年4月にはサイボウズと業務提携し、リコーブランドのkintoneを共同開発し、10月に発売する予定です。
もちろん、リコージャパンの社内でもkintoneを活用している部署があります。今回は、社内の業務改革推進を担当するマーケティング本部 新潟支社 プロモーショングループ 丸田莉恵子氏と技術サポートの同ソリューション営業部 新潟コーディネートG 佐藤久伸氏、とりまとめ担当の同ソリューション営業部 新潟コーディネートG リーダー 祝義人氏にお話を伺いました。
マーケティング本部 新潟支社 プロモーショングループ 丸田莉恵子氏
紙とFAXの運用を、コロナ禍を契機にDX化へ
「リコージャパンは今、デジタルサービスの会社に生まれ変わろうとしています。これまでは複合機やFAXの販売とサービスが主の会社ですが、世の中の流れの変化と共に、お客様のニーズも変わってきており、DXでお客様の働き方改革をするようなサービス展開をしようとしています。リコージャパンは各都道府県に支社があり、全国で展開している企業でありながら、どちらかというと地域に密着し、様々な業種のお客様に、企業価値の向上を図るご支援をさせていただいているのが特徴です」(祝氏)
コロナ禍では、リコージャパンも大きな影響を受けました。在宅勤務などのテレワークが一気に増え、オフィスに人が集まらなくなりました。人が集まらなければ、オフィスの複合機を使用することが減ってしまいます。一方で、テレワークで使われるITインフラやITソリューション、それらを支えるセキュリティが重視されるようになったのです。
もちろん、以前からDXへのチャレンジは続けていたそうですが、以前はテレワークの話をしても、なかなか受け入れてもらえなかったようです。コロナ禍で「もうテレワークしなきゃダメだよね」と変化したそうです。その現象は、丸田氏の部署でも同じような状況でした。
「kintoneの導入前は、例えばイベントのアンケートを取る際も紙で行っていました。当然集計が大変ですし、目当ての資料を探すのも手間がかかります。紛失の可能性もあり、セキュリティ面でも課題がありました」(丸田氏)
イベントの案内をメールで配信しても、申し込みの受付はFAXで送ってもらったりと、顧客に手間をかけてしまうこともあったそうです。これでは業務効率は上がりません。
業務効率の面では、社内でのナレッジ共有にも課題がありました。グループウェアとして『Notes』を利用し、社内Q&Aでナレッジを共有していたのですが、『Notes』から『Microsoft 365』に乗り換えることになったのです。しかし、気軽に従業員が質問できる場は残しておきたいというニーズがありました。
同時に、Excelに関する課題も発生していたそうです。イベントで使うモニタやマイク、スピーカーといった備品の管理をExcelで行っていましたが、必要になった社員が毎回、担当者まで直接聞きに来ていたのです。Excelを作った人は、問い合わせに対応する業務を担っているわけではないので、この状況も解消しなければなりません。備品の状況を誰でも好きなタイミングで見られるようなシステムが欲しいと考えるようになりました。
「kintoneを導入するきっかけになったのは、コロナ禍でウェビナーが増えたからです。そうすると、今まで通り申し込みをFAXで受けるわけにはいきません。いくつかのフォームサービスを検討しましたが、リコーグループのセキュリティ要件をクリアし、アカウントを持っていない社外の第三者に入力してもらえるということで、最適解が『kintone+フォームブリッジ』だったのです」(佐藤氏)
フォームブリッジがあれば、ウェビナーの参加希望者がkintoneアカウントを持っていなくても利用でき、そのデータをkintoneに集約して活用できるという点が決め手となり、2020年4月に導入されました。
フォームブリッジ+kViewerでkintoneライセンスがない人でも利用可能に
従来は、アンケートをその場で書いてもらっていましたが、アンケートをkintoneとフォームブリッジでデジタル化したことで、いつでも返答してもらえるようになりました。QRコードでアンケートのURLを開けば、スマホで隙間時間に入力してもらえるのです。回答はkintoneに自動的に登録され、営業担当者がkViewerで見られるようにしています
「デジタル化したことで、紙での運用時よりも多くの項目に回答してもらえるようになりました。やはり手書きする手間が負担になっていたのかもしれません」(祝氏)
同様に、ウェビナーの受付もフォームブリッジで行い、営業担当者が、kViewerで見られるようにしました。さらに申し込みがあると、kMailerを利用し、自動的にウェビナー用のURLを記載したリターンメールを送信しています。従来であれば、1件1件、手動でメールを送信していた時と比較すると、大幅な工数削減となりました。
フォームから登録された情報を、リアルタイムで営業担当者が確認できます
また社内Q&Aの「知恵の環」もフォームブリッジとkViewerで作成しました。投稿画面と一覧画面で構成されており、ナレッジを共有しています。「知っ得お仕事情報」では、仕事を行う上で気がついたことや疑問などを投稿し、記名式となっています。「みんな教えて!みんな聞いて!」は無記名でも投稿でき、疑問や困りごとなどを気軽に質問できる掲示板となっています。
この無記名で投稿できる、という点も重視したそうです。比較検討したシステムでは、無記名での運用ができませんでしたが、フォームブリッジは対応しています。例えば、年配の社員が聞くには初歩的すぎる質問も、匿名であれば恥ずかしがらずに投稿できます。他にも、社内的に調整をしたいが、自分の所属や名前が見えると、忖度のような不都合が生じる可能性が出てきます。匿名だからこそ、吸い上げられる意見もあるとのことです。
kintoneライセンスを持たない社員がkViewerを通して投稿内容の確認ができます
「社員名簿も、kViewerで作成しました。社員の顔と名前、部署、役職などを一覧で表示し、検索して誰でも探せるようになっています。社員数が多いので、同じ名前でも漢字が違うケースもあるので、カタカナでも検索できるように工夫しています。リコージャパンでは組織名が変わることが多く、電話応対で名前はわかるけれど、どの部署なのかわからない、この人は今どの事業所にいるのか、などを調べることができます」(丸田氏)
リコージャパン内で他支社から転勤してくる人も多いそうですが、新潟支社には約200人が勤務しているので、いきなり全員の顔を覚えることは難しいです。そこで顔写真付きの社員名簿を活用することで、スムーズに仕事に入ることができた、といった声が寄せられているようです。
Excelで管理していた備品管理もkintone化しました。新潟支社だけで4拠点あるので、モニターやマイク、スピーカーがどこにあるのかなどをまとめ、そのExcelに集約する処理などが手間になっていましたが、kintone化することでその手間がなくなりました。誰でもいつでも、kViewerのビューを見ると備品の所在を確認できます。都度問い合わせの電話がかかってくることもなくなり、Excelの担当者は本来の仕事に集中することができるようになりました。
kViewerで作成した、実際に社内で利用している備品管理台帳です
リコージャパンには、新入社員に先輩がアドバイスするOJTの仕組みであるアドバイザー制度があるので日報の提出は必須です。しかし、営業担当向けには専用の日報管理システムがあるのですが、内勤業務である丸田氏が日報を入力するシステムがありませんでした。
そのため仕方なく、以前は毎日Excelに入力してプリントアウトしたり、メールで送ってアドバイスをもらっていましたが、kintoneの導入を機に日報アプリを作成しました。丸田氏と先輩のアドバイザーは、kintoneのライセンスを付与されていますが、さらにその上司はライセンスがありません。そこでkViewerを使って日報を閲覧、アドバイスを入力できるアプリを作ったのです。
日報の内容を、kintoneライセンスを持たないアドバイザーがリアルタイムに確認可能に
業務に必要なものの、ニッチで小さなシステムもkintoneなら手軽に開発できます。さらに、kintoneアカウントがなくても、フォームブリッジやkViewerを利用すれば、kintoneのデータにアクセスできるという特徴を捉えた素晴らしい事例でした。
取材にご協力いただいた(左から)祝義人氏、丸田莉恵子氏、佐藤久伸氏
最後に、今後の展望を伺いました。
「現在もkintoneを様々な場面で利用しているので、フォームブリッジとkViewerも、このままアンケートや申し込みフォームとして活用していきたいと考えています。もちろん、現在の業務でもまだまだ活用できていない部分もあります。困りごとやまだ見えていない問題点をトヨクモ製品を活用して、解決していきたいと思っております」(丸田氏)
なお、リコージャパンは「リコーkintone支援センター」で、kintone導入の支援や、kintoneに関する各種セミナーを開催しています。
「我々が感じている課題は、お客様が抱えている課題と通じるところがあると思います。そのため、しっかりと自社でも活用をさらに進めていき、実際にkintoneやトヨクモ製品で解決できた課題は、それを事例としてお客様に紹介しながらご提案していきたいです」と祝氏は締めてくれました。