複数のkintoneアプリからデータを集めて2週間先までの稼働を可視化
京都リハビリテーション病院様
京都リハビリテーション病院では、他の病院から転院する患者を受入れ、リハビリテーションの支援をしています。そのため、他病院との連携が重要になりますが、以前はFAXを使って情報共有をしていたのです。そのおかげで、患者数が増えるごとにタスクが増え、病院から連絡が来てから実際に患者を受入れるまでの日数が伸びてしまうという問題が発生しました。
そこで、情報共有基盤としてkintoneを導入し、スムーズな情報連携を実現したのです。その後も、日々の課題をkintoneアプリで次々と解決しています。今回は、患者数の人数を管理するレポート作成の手間を省くために「データコレクト」を導入した経緯と効果などについて、地域医療連携室 室長補佐 瀧村孝一氏にお話を伺いました。
瀧村氏は現在、株式会社MOVEDでも活躍中で、kintone及び連携製品と幅広く提案しています。
地域医療連携室 室長補佐 瀧村孝一氏。副業で株式会社MOVEDでkintoneの導入支援も行っています。
■導入前の課題
問い合わせから入院までの日数が業界平均を超えた2週間以上
紙やエクセルの作業で残業時間が延びていた
2週間先までの入退院の予定を簡単にまとめたい
■導入後の効果
kintone:問い合わせから入院までの日数を半減できた
kintone:17時に帰れるようになった
データコレクト:毎日1時間かかっていたまとめ作業がゼロになった
データコレクト:今後は売り上げの集計や在庫管理にも活用できそう
課題■FAXとエクセルでの情報共有で業務に遅延が発生していた
京都リハビリテーション病院は、京都清水メディケアシステムグループのひとつです。京都清水メディケアシステムは、昭和28年に京都伏見住吉の診療所とスタートし、医療法人清水病院、医療法人清水会京都伏見しみず病院を経て、2016年に「京都リハビリテーション病院」を中核とするトータルメディケアゾーン「ケアフルヴィレッジ伏見しみずの郷」をオープンしました。
京都リハビリテーション病院はその名の通り、回復期の患者がリハビリテーションを受けられる病院です。怪我をした人が救急車で運ばれてくるようなことはなく、他の病院から転院してくる患者さんを受入れているのです。
2016年度にリハビリテーション病院として病床機能を変更したのですが、業務は従来通り、アナログで処理していました。毎日FAXが届くのです。そのFAXをコピーして、医者や看護師に渡し、その先も口頭などで情報共有をしていました。
当時、相談員だった瀧村氏は再スタートを切ったばかりの京都リハビリテーション病院のために、営業も頑張りました。順調に病院からの申込数が増えたのですが、問い合わせから入院するまでの日数も伸びていきました。これは、他の病院から連絡を受けてから、実際に患者を受入れるまでの日数を表します。
2016年第1四半期は空いていたので4~6日でしたが、第2四半期は7~9日、第3四半期は10~12日、第4四半期に至ってはなんと2週間以上になってしまいました。ちなみに、業界平均は11日を切るくらいです。京都市内だけで見ると、9日を切らないと病院として生き残るのは難しいそうです。その理由は、大きな病院が患者を入院させる場合、適切な時期に退院してもらう方が評価される仕組みになっているためです。
瀧村氏は問い合わせから入院するまでの日数が伸びている原因は、情報共有のやり方が非効率なためと考えました。毎日8時から21時まで働いてもなかなか帰れないほど、雑務が多かったのです。そこで、出会ったのがkintoneでした。すでに、kintoneを導入していた宇治徳洲会病院と情報連携するため、京都リハビリテーション病院でもkintoneを導入することになりました。
導入■kintone導入は成功したが複数アプリからデータを集める際につまづく
kintoneを導入し、紆余曲折を経ながら病院内での活用を進めたところ、なんと現在の受入れ入所日数は5日になっています。これは、新型コロナウィルスの影響があるからだそうですが、それがなかったとしても7~8日とのこと。2週間以上だった以前と比べると、半分になっています。
業務が効率化されたおかげで、17時前には仕事が終わるようになりました。以前はFAXをコピーして、明日どんな患者が来るのかをあちこちに貼っていたのですが、今はkintoneの通知で届くようになるなど、無駄な作業を削減できたためです。余った時間で翌日の準備をできるまでになりました。
「kintoneを業務で活用する中で得られたノウハウを、個人的に「キンボウズ」というブログで書いています。例えば、昨日はベンチプレスを上げると、重さと回数をkintoneに通知するというネタを書きました」(瀧村氏)
右下が瀧村氏。取材はコロナウィルスの影響でリモートで行いました
「キンボウズ」(https://kinbozu.com/)は医療介護業界でのkintone活用事例だけでなく、広く業務改善をするためのヒントを公開し、人気を集めています。
その後も様々なkintoneアプリを作成し、病院やグループ施設で活用を進めました。そんな中、新しいニーズが浮かんできました。
複数のアプリから情報を集約したくなったのです。例えば、現在サービスを利用されている中で、その中で要介護度5の人が何人いるのかを把握したいというケースです。他には、病院からの申し込みがグループ全体で何件来ているのかや、事業所ごとの売り上げの合計を確認したいというニーズも出てきました。
「以前は、事業所ごとの情報を毎日、どこかのアプリに固めて集計するという作業を手作業でやっていました。CSVで出力して読み込んだり、グラフや集計を見てアプリに手で打ち込むのです。この作業を毎日1時間やる人を用意していました」(瀧村氏)
複数のアプリからデータを取ってくるサービスはいくつかありますが、瀧村氏がいろいろとテストしたところ、あまりしっくりこなかったそう。高額すぎたり、動作が遅かったり、操作が難しかったため、悩んでいたそうです。
「(2020年3月に)リリースされた「データコレクト」を見て、すぐに使ってみようと思いました。「kViewer」も「フォームブリッジ」も「プリントクリエイター」も使っているので、みんな使い勝手はわかっています。見た目も似ているので、使いやすそうだなと感じました」(瀧村氏)
京都リハビリテーション病院では「kViewer」や「フォームブリッジ」「プリントクリエイター」も活用しています。
効果■レポートの作成時間がゼロに! 簡単にJavaScriptを設定できるのがラク
早速、瀧村氏は「データコレクト」の無料トライアルで、入院者数と入所予定の待機者、今後2週間の入退院予定を管理するアプリの作成にチャレンジしました。
患者ごとに入院日は決まっているので、その情報を「データコレクト」で引っ張ってきます。医者ごとに担当している、この先14日間の入退院する人数を把握するのが目的です。そのため、多数の条件を設定し、フィールドを用意しました。
「絞り込んだ一覧をクエリとしてコピーできるのが、とても使いやすくてありがたいです。関数を知らなくても、ボタンを押したらコピー&ペーストした状態になってくれるのが簡単です。人にも教えやすいですね」(瀧村氏)
絞り込んだ条件を簡単に取り込めるのが特徴です
2週間先のフィールドまで、目的のデータを取り込むように設定しています
各事業所の情報を毎日午後11時に集計し、その記録を0時に各アプリから取り込んで集計アプリに送り込んでいるそうです。瀧村氏が出勤すると、全事業所の必要な情報が集ったレジュメのようなものが完成しているというわけです。さらに、kintoneを直接見られない人のために、集った情報をプリントクリエイターでPDF化し、Slackで共有するようにしました。
その結果、CSVファイルで集める毎日1時間かかっていた作業がなくなりました。いつでもkintoneで最新の情報が確認できるようになったのです。
「現在の入院人数と待機人数がわかればいいという職員もいます。ルックアップや関連レコードを使うと、元のアプリの権限がないと閲覧できません。とは言え、あまりアプリの権限を渡したくもありません。「データコレクト」でデータを集めたアプリは、集計元アプリの権限がなくても、全員が閲覧できるように設定できます。今までできなかったことができるようになったので、ありがたいところです」(瀧村氏)
別のメリットもありました。例えば、瀧村氏が休みの土日でも入退院が発生します。その際、土日で元データを入れていなくても、集計したアプリで修正することができます。計算式で出していると、元データをいじるのが大変です。ミスが起きたときに、手軽に帳尻を合わせられるのが便利に感じているそうです。
「わかりやすいガイドが用意されているので、いちいち調べなくてもどうにかなってしまうのがありがたいところです。最初はうまく設定できずにエラーが出ることもありましたが、トヨクモさんに聞いたら、すぐにやり方を教えてくれたので助かりました」(瀧村氏)
すでにアプリの改良予定は立てており、次は「データコレクト」で固めている情報を増やしたいそうです。その日の訪問件数がわかれば、稼働時間に介護保険の単価をかけて売り上げの概算を出したいとのことです。1日の売り上げを累積し、売り上げ目標を達成したら通知を出せるようにするそうです。
最後に今後の展望を伺いました。
「今でも在庫管理は手動でやっているので、持ち出すときにkintoneで管理して全体の在庫から減らす、というアプリを作りたいですね。最近はマスクの管理が特に大変なので、別の部署の責任者にkintoneで管理してみないか、という話を投げているところです。また、脳神経リハビリ北大路病院が、グループの一員となりました。より情報の共有が重要となりますので、kintoneの需要も高まっているところです」と瀧村氏は語ってくれました。