煩雑だったパスワード管理を廃止、kintoneとメール認証で年間1300通の郵送物を削減
公益社団法人神奈川県社会福祉士会様
公益社団法人神奈川県社会福祉士会(以下、神奈川県社会福祉士会)は、神奈川県内に在住・在勤する社会福祉士が任意で加入する職能団体です。主に地域福祉に関する相談・支援、福祉サービスの質向上、社会福祉に関する知識及び技術の普及・啓発など、神奈川県内における社会福祉の推進と発展を目指して日々活動しています。
2022年11月現在、団体における従業員は21名、加入する社会福祉士の数は約3,200名にのぼり、そのうち約670名が権利擁護センター「ぱあとなあ」の成年後見人等候補者名簿に登録されています。
近年、高齢化が進むにつれ成年後見人制度を利用する方が急増。非常勤スタッフ含め7名で対応することに限界を感じ、2022年11月に報告書を電子化することが決定しました。翌年2月の報告書提出期限に間に合わせるため、すでに運用されていたkintoneを活用し、急ピッチでシステム開発が行われました。
今回は、kintoneとトヨクモ製品を紐づけることで、紙ベースとなっていた作業を一変させ、手間や時間を軽減させるだけでなく、コストカットにまでつながるシステムを構築した事務局の一色 茂雄様にお話を伺いました。
公益社団法人神奈川県社会福祉士会 事務局 一色 茂雄様
kintone導入後はリアルタイムで会員情報を把握できるように
会員情報を管理している名簿管理アプリ
神奈川県社会福祉士会では、それまで利用していたWindows7がサポート切れとなりWindows10へ移行したものの、同時に会員名簿を管理していたFileMakerについても対応外となってしまいました。そこで、これまでの管理に代わる方法はないかと模索されたそうです。
それまでの会員名簿は、神奈川県ではなく上部団体である日本社会福祉士会が管理しており、そこから県が必要なデータを拾い出すという流れになっていました。ところが、日本社会福祉士会のシステムは暗号化されていたり、アクセスできるデバイスが限られていたりとアクセスに手間がかかることが難点でした。
「kintoneを活用することで、IDとパスワードさえあれば、事務局のスタッフがどこからでも簡単にアクセスできるようになったのが大きなメリットですね」(一色氏)
神奈川県社会福祉士会では、2022年4月にkintoneを導入。従来の日本社会福祉士会に事務作業を委託するシステムを解除し、県で管理することで会員情報がリアルタイムで把握できるようになりました。
システム導入でコピーも郵送も分厚いファイルも全て必要なくなった
報告書を紙ベースで管理していた頃は分厚いファイルが山積みになっていた
神奈川県社会福祉士会で大きな課題の1つとなっていたのが、入会の申し込みから報告書の提出に至るまで全てが紙ベースで行われていたという点です。それまでの事務委託を解除し自分たちで作業を行うにあたり、可能な限り電子化しようという流れになりました。
とはいえ、kintoneを導入するだけでは外部とのやり取りがうまくいかない、全員分のIDを確保すると膨大な費用がかかるといった課題が生じ、サイボウズ社に相談したところトヨクモのサービスを紹介されたそうです。
「まずは『フォームブリッジ』をご紹介いただきました。その後、お試し期間中に他のサービスを知り、他の3製品も併せて活用させていただくことにしました」(一色氏)
神奈川県社会福祉士会には、現在約670名の成年後見人等候補者が会員登録されていますが、会員の成年後見人等としての質を担保するために、年に2回の活動内容報告を義務付けています。従来は、各会員に紙ベースの報告書を郵送にて提出してもらい、事前に選出した報告書チェック担当者にそれらのコピーを再度郵送して内容を確認してもらうという流れで作業を行っていたため、工数と時間がかかっていました。
「定期報告の際は、分厚いファイルを何冊も並べて確認作業していました。現在もパソコンに慣れない会員に対しては紙ベースで対応していますが、部数は明らかに減っています。チェック担当者に郵送する手間もなくなり大幅に作業が効率化されました」(一色氏)
神奈川県社会福祉士会では、システムを導入するにあたり「インターネット上で報告書を提出できること」「報告者が提出内容を確認できること」「提出物を印刷して残せること」「報告者とチェック担当者が直接やり取りできること」という条件がありましたが、トヨクモ製品をプラグインすることで、それら全てが解決されています。
トヨクモ製品を複数連携して運用することで大幅なコストカットを実現
神奈川県社会福祉士会では2021年11月に電子化が決まり、翌年2月に運用を開始するために急ピッチでシステム構築が進められました。スケジュール的に余裕がなかったこと、あらかじめサイボウズ株式会社から紹介を受けていたことから、他社のシステムと比較することもなく導入を決定したそうです。
「まずは報告書の内容を直接入力できるようフォームブリッジを設定しました。提出した内容に関しては『kViewer』のMyページ機能を利用して、会員自身で情報を確認できるようにしています。中には紙ベースでの控えを求める人もいるので、そういった会員に対しては『プリントクリエイター』を使ってPDFで出力できることを案内しています。また、チェック担当者からはkintone上で直接報告者に問い合わせができるようメール送信サービスである『kMailer』も導入しました」(一色氏)
プリントクリエイターを使ってPDF出力した報告書控え
kViewer上で報告書の申請状況が確認でき、必要に応じて会員自身で入力が可能
このように、フォームブリッジを基準にその他トヨクモの3製品を紐づけることで、報告書の管理から各会員とのやり取りまで全工程が大幅に効率化されたといいます。
フォームブリッジ上から各会員に情報を入力してもらい、管理者はkintoneアプリでその内容を確認します。報告者が内容を確認したい場合は、kViewerのMyページビューを連携することで適宜確認や修正が可能です。プリントクリエイターを活用して各自出力ができ、問い合わせに関してはkMailerで対応するという流れを作ることで、これまで膨大な時間と手間がかかっていた作業が一気にスムーズになりました。
「報告書の提出が非常に楽になったという意見が多く、団体としても600人以上に対する郵送費用がかからなくなったという点で高評価をいただいています」(一色氏)
現在は、報告書だけでなく入会の申し込みに関しても電子化を進めているとのことです。また、紙ベースで保管する必要がある書類に関しては、基本的に全てプリントクリエイターを経由させる形で管理されています。
加えて、会員向けにメールを配信する際は、基本としてkMailerを経由するようになり、一斉送信や予約送信の管理もしやすくなったとのことです。
「Toyokumo kintoneApp認証」機能で入力の手間を省略、報告の質を向上させた
報告書の提出は、場合によっては1人の会員が複数の報告書を提出するケースもあります。その場合、MyページビューでURLは確認できますが、パッと見ただけでは内容まで把握できず、入力漏れや報告漏れにつながってしまうという懸念があったそうです。
IDとパスワードを利用した申請方法では、パスワードを忘れてしまったり、他のID/パスワードと混同したりする可能性があるため、パスワードレス認証が最適だと判断されたそうです。
「個々の会員ごとに一覧表として確認できる方法はないのか、と頭を悩ませていたところに『Toyokumo kintoneApp認証』の案内があり、迷うことなく導入しました」(一色氏)
すでにkintone上で作成した会員向け研修管理システムの中に個別のメールアドレスが登録されていたため、紐づけるのにも手間はなかったそうです。「Toyokumo kintoneApp認証」を導入することで「提出状況を一覧として可視化したい」という課題が解決できました。
ちょっとしたひと手間で作業がよりセキュアで効率的に
神奈川県社会福祉士会では、「Toyokumo kintoneApp認証」機能をkintone上の「成年後見人名簿管理アプリ」と連携しています。会員が、kViewer上で構築した「ぱあとなあ定期報告ポータルサイト」にアクセスすると、当該会員の報告書情報が表示される仕組みです。
「ぱあとなあ定期報告ポータルサイト」から進捗状況の確認や報告書の提出が可能
ページ左上部にはいくつか項目が用意され、それぞれフォームブリッジやkViewerとリンクされています。リンク先にも「Toyokumo kintoneApp認証」が採用されているため、認証を通ることができるユーザーのみが申請や報告を行うことができます。
申請を行うWebフォームです
再度会員ページに戻って確認すれば、報告書の提出状況や報告日時が一覧として表示され、変更があれば一覧から修正することも可能です。
「報告書の入力形式や必須項目が未入力である場合は、エラーで知らせてくれるので、入力ミスや入力漏れが一切なくなりました。また入力後に提出する際にも、フィールドにチェックを入れない限り送信できないシステムにしました。こうすることで、これまで発生していた報告漏れという問題も解消されました」(一色氏)
報告書提出の最終確認ページで「確認」項目にチェックを入れることで報告漏れを回避
「Toyokumo kintoneApp認証」機能とフィールド上のひと工夫を合わせることで、よりセキュアな状態で作業の効率化が図れたことを実感されているそうです。
2022年11月現在の「Toyokumo kintoneApp認証」機能登録人数は約670名。1日1回深夜0時にマスタとなる「成年後見人名簿管理アプリ」と「Toyokumo kintoneApp認証」機能が自動同期するよう設定し、常に最新の状態で運用できるようにしている、とのことです。
「Toyokumo kintoneApp認証」の導入で年間1300通の郵送物がゼロに
「Toyokumo kintoneApp認証」機能を導入したことで「報告した案件が確認しやすくなった」という声が挙がっているそうです。しかしそれ以上に、団体側でも非常に大きな効果を感じているといいます。
「作業が可視化できるようになったので、システム導入前に比べると入力漏れや報告漏れが確認しやすくなり、件数自体も大幅に減りました。何よりToyokumo kintoneApp認証を通してログインすることにより、自身で情報を確認できるようになったため、郵送での共有が不要となりました。書類の郵送にかかっていた費用までカットできたのが非常に大きいです」(一色氏)
従来、通常であれば約670通郵送していた配布物も現在は0になっているとのことです。報告書の提出は年に2回あるため、単純に考えても1,340通分の封筒代や郵送料が不要になったのです。
また社内では、報告書を提出する会員に向けて、操作手順をまとめたマニュアルを用意しています。マニュアルに沿ってログインするだけでスムーズに作業が進められるため、これまで操作方法に関する問い合わせもなく運用できているそうです。
ポータルサイトのログインマニュアル 手順を分かりやすくまとめている
最後に、今後の展望や製品の活用方法についてお伺いしました。
「現在の活用例としては報告書の提出のみとなっていますが、これから成年後見人の業務に関してもシステム化していく予定です。現状では、新しい報告に関しては一からデータを入力する必要があるのですが、その部分がシステム化できれば、成年後見人推薦時に入力されたデータを報告書に反映させることができるので、作業が大幅に軽減されます。また現在は、成年後見人の依頼はメールで通知するという流れになっています。そこに関しても、今後はトヨクモさんのkViewerを活用していきたいと考えています。例えば、定期的にメールを配信し、それぞれの会員が一覧表で募集している案件を確認できれば、今よりもスムーズにマッチングができるはずです。成年後見人の業務に限らず、約3,200名の全体会員名簿も『Toyokumo kintoneApp認証』機能で管理していきたいですし、まだまだ多方面で活用できると思っています」(一色氏)
取材時期:2022年11月
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります