学校法人創志学園は、神戸市中央区に本部を置く学校法人です。基本理念に「挑戦と創造の教育」を掲げ、幼児教育から小学校・中学校・高等学校の学外教育、高校教育、大学教育、専門教育まで一貫して運営しています。
1966年(昭和41年)に神戸市で学習塾を創設したことを皮切りに、クラーク記念国際高等学校や東京国際ビジネスカレッジなどを開校、2007年には環太平洋大学を開学しました。
環太平洋大学では、2019年にサポートが終了したデヂエからkintoneに移行。教職員の情報管理に活用しようと試みたものの、約250名分のライセンスを購入するとなると現実的ではないと感じ、トヨクモプラグインの契約に至ったといいます。今回は、kintoneとトヨクモ製品を組み合わせて、情報管理の手間や心理的ストレスを大幅に削減することに成功した学校法人 創志学園 環太平洋大学 情報システム課 大賀吉功氏にお話を伺いました。
学校法人 創志学園 環太平洋大学 情報システム課 大賀 吉功氏
各自行っていた管理を一元化することで情報の可視化を実現
これまで創志学園では、神戸にある本部、岡山県にある環太平洋大学ともにサイボウズ社のウェブデータベース「デヂエ」を使って情報管理を行っていたそうです。しかし2019年にサポートが終了となり、それを機にkintoneに移行したということです。
「現在は主に、教職員の立替請求の振込先口座登録と振替休日の管理にkintoneを活用しています。これまでExcelや紙ベースで管理していたものをkintoneの一括管理に変えたことで、そこにかかっていた手間や時間が大幅に削減されました」(大賀氏)
環太平洋大学では、教職員が物品などを購入した際、領収書を基に各自で立替請求を行い、経理がその代金を個人の口座に振り込む仕組みとなっています。従来、教職員の振込先はExcelにて管理していましたが、kintone導入後は口座番号の登録処理などの立替請求に関わる作業はシステム上で行うようになり、セキュリティ面でも安心して管理できるようになったといいます。
また、立替請求と同様に、教職員の振替休日や有給休暇の管理も各自で行なうことになっています。中にはExcelを活用している人もいますが、ほとんどの人が紙ベースで管理しているため、それぞれの教職員における振替休日の残数や有休消化状況などを、本部でタイムリーに把握するのが困難な状態でした。今ではkintoneで一元管理されているため、それぞれの状況が一目で分かるようになったそうです。
kintoneを導入することで、バラバラに管理していた情報をまとめて管理が可能に
「学生の就職活動支援にもkintoneを導入しました。それまで紙ベースで記録していた学生の情報を一元管理することで、誰がどこで検索してもすぐに目的の情報を見つけることができ、偏りなく情報を引き継ぐことができるというのが非常に便利だという声が現場から上がっています」(大賀氏)
環太平洋大学には学生の就職を支援する「キャリアセンター」があり、日常的に学生の面談やヒアリングが行われています。kintoneを導入するまでは、学生とのやり取りは紙ベースで記録・保管されていたとのことです。その後Excelが導入されましたが、面談やヒアリングは毎回決まった担当者が行うわけではないため、過去のデータを見る際は分厚いファイルの中から記録を探したり、Excelを開いて検索をかけたりといった作業が大きな手間となっていたそうです。
「そのスタッフがどこからアクセスしても、必要な情報だけをすぐに見つけられて非常に便利です。kintoneを導入して、まさに『情報の可視化』が実現されたと実感しています」(大賀氏)
システムを導入してからは、学生の面談やヒアリングの内容はkintoneに登録する流れを作りました。以前に比べると、非常にスムーズに職員間で情報共有ができるようになったとのことです。
トヨクモ製品で大幅コストカット タイムラグのない情報共有が可能に
環太平洋大学では、もともと利用していたデヂエのサポートが終了となった時に、デヂエの料金体系と同様にライセンス契約で運用できる製品を探したそうです。
「教職員が250名ほどいますが、立替請求にしても口座を登録するのは年に1回です。そのためだけにライセンスを購入するのは現実的ではないと考え、ユーザーごとの課金が必要ないトヨクモを選びました。30日間無料で色々な機能をお試しできたのも大きいですね」(大賀氏)
250名以上の教職員を抱える環太平洋大学では、年に数回の利用のために1人ずつライセンスを購入するという点が課題となりました。そこで、まずは数ユーザーでkintoneをテスト的に契約し、他ユーザーに関してはkintone以外のライセンスで、と探した際にトヨクモ製品を見つけたそうです。30日間お試しで運用し、問題ないと判断された上でそのまま契約に至ったとのことです。
「有休管理や口座登録をシステム管理するにあたり、kintoneアカウントを持たない各教職員が自身で情報を確認できる、登録できるという機能が必要でした。そこで、情報を確認するためにはkViewer、情報を登録するためにはフォームブリッジという形でまずは2製品を続けて契約しました」(大賀氏)
外部ユーザーに情報公開するためのプラグインを探すにあたり、サイボウズ社のホームページを参考にしたり、SIerに相談したりしてトヨクモ製品に辿り着いたそうです。他社のプラグインと比較検討したところ、トヨクモの製品はそれぞれ連携させて運用することもでき、最も費用対効果が高かったとのことです。
「kintoneが基本にあってフォームブリッジで登録し、それをkViewerで見るというイメージです。他社製品に比べると操作性がよく、比較的簡単に運用ができています」(大賀氏)
教職員が立替請求をする際、提出された領収書は同じくサイボウズ社のGaroonのワークフローを使ってスキャン、添付した上で経理課に申請される流れとなっています。経理で承認されれば、購入費用が本人の給与口座に振り込まれるという仕組みですが、中には別の口座への振り込みを希望する人もいます。そのような場合の手続きにかかる手間を省くために、フォームブリッジで口座情報を登録・編集し、kViewerで現状を確認できるようなシステムを構築したそうです。
フォームブリッジで登録や編集した内容は、kMailerを使って本人に通知される仕組みとなっているとのことです。また、有休を消化した日や振替出勤した日、あるいは代休を取った日などについても、全く同じ仕組みで各教職員が登録できるようなシステムを構築しており、本部のデータとのタイムラグや食い違いがなくなったといいます。
登録をして手元に届く受信メールです。
振休休日を申請するフォーム画面です。
「現在は、Garoonの画面に有休管理や振替休日の管理、立替請求、精算口座登録などさまざまなリンクが貼ってあり、活用したい人は自由に活用できるシステムです。経理の人も、そこからデータを確認して振り込むといった流れになっています」(大賀氏)
環太平洋大学では、当初導入していたデヂエで全く同じ作業を行っていたため、すでにシステムは電子化されていました。そこで新たに導入したkintoneにトヨクモ製品を組み合わせることで同じことができることが分かり、乗り換えたとのことでした。
環太平洋大学では、基本的にフォームブリッジ、kViewer、kMailerの3製品を組み合わせて運用を行っていますが、その他に製品を単体で活用しているシーンもあるそうです。
「教職員が自分の情報を登録し、自分だけが見るというシステムをレコード単位で管理しているのが1つです。もう1つは、キャリアセンターでの活用です。キャリアセンターのシステムには、学生の個人情報の他に、スタッフが学生と面談やヒアリングした結果が登録されています。そのため、他部署のスタッフが学生情報を検索する際は、個人情報のみが表示される設定にしています」(大賀氏)
kintoneのシステム上に学生の情報は集約していますが、他部署のスタッフには開示制限をかけ、公開できる情報のみをkViewerで表示させるという形にしているとのことです。
「Toyokumo kintoneApp認証」機能で登録の手間や入力漏れを軽減
2022年2月頃にトヨクモからのメールを受け取り、「Toyokumo kintoneApp認証」機能について知ったそうです。それまでは、ID・パスワード認証を使って教職員約250名分を登録していたため、入退職に際して膨大な手間と時間がかかっていたとのことです。
「『Toyokumo kintoneApp認証』機能は、マスタとなる1つのkintoneに情報を入力するだけで自動的に各フォームとビューに反映されるので、入力の手間が大幅に減りました。簡単に利用できるため、現在は教職員だけでなく学生も対象として使用しています」(大賀氏)
Toyokumo kintoneApp認証で管理するマスタ情報のアプリ画面
もともと立替請求や有給休暇などの手続きについては教職員だけが対象となるため、250名分のID・パスワード認証をフォームブリッジ、kViewerにそれぞれ登録するという形にしていたそうです。しかし、職員が入社あるいは退社する度に製品ごとに登録・削除しなければならないという手間が発生していました。それが「Toyokumo kintoneApp認証」機能により、kintoneに登録した情報が自動同期されることとなり、非常に便利になったと感じているとのことです。
「『Toyokumo kintoneApp認証』では、Googleのアドレスがそのまま使えるのが非常に便利です。現在、学内でもGoogleのメールアドレスをメインに使っているので、シングルサインオンの形で使えるのはかなり有難いですね」(大賀氏)
ID・パスワードを使用した認証では、製品ごとに登録しなければならない、パスワードが固定されユーザー側で任意に変更できないといったことから、IDやパスワードを忘れてしまったという問い合わせが多発していました。また、入社時にIDやパスワードの入力漏れがあり、いざ使用する時にログインできないというケースも珍しくなかったそうです。「Toyokumo kintoneApp認証」機能を採用してからはそうしたトラブルが一切なくなり、非常に円滑に運用できているとのことです。
「Toyokumo kintoneApp認証」機能でデータの一元化を目指す
環太平洋大学では、kintoneとトヨクモ製品を活用して教職員の立替請求や有休・振替休日などの管理を行っていますが、「Toyokumo kintoneApp認証」の登録は、特に説明の場を設けるなどの手間はかけず、各自行ってもらう形としているそうです。
「Garoonにリンクが貼ってあり、クリックすると『Toyokumo kintoneApp認証』の画面に遷移します。登録にあたり難しい設定が一切必要ないので、簡単に操作できます。ただ単純に1回Googleでログインすれば済むので重宝しています」(大賀氏)
Garoon(ガルーン)内に設定されたリンクからアクセスが可能です
リンク先で「Googleでログイン」を選び、普段使用しているGoogleのメールアドレスを登録することで認証が完了し、そこから教職員が有休管理や振替休日のURLを選べば、ログインしている人のレコードだけが抽出されてkViewerで表示されるという仕組みです。有休を追加したい場合は「追加ボタン」を押せばフォームブリッジの入力ページに飛び、登録後はkMailerで更新された内容が届くとのことです。
「大学ということもあり、デジタル操作に慣れていない年齢層が多くいます。少しややこしくなると使ってもらえないので、Garoonにさえアクセスすれば、あとは簡単に操作できるということでトヨクモの製品は最適でした。誤ってログアウトしてしまったとしても、普段使っているGmailで認証できるので、問い合わせせずにご自身で解決できる点も、すごく助かっています」(大賀氏)
現状としては、上記のように教職員の立替請求や有休・振替休日の管理をメインとして「Toyokumo kintoneApp認証」機能を活用しているそうです。今後は、教職員の情報に加え学生の情報までkintone上で管理し、立場や所属部署によって開示内容に制限をかける形で運用することで、セキュアにデータの一元化を実現していきたいとのことです。
「今後、学生にもkintoneに情報登録してもらって活用できたらな、と考えています。教職員の有休と同じように、学生の通学方法など申請関係にも活用できると思うので、kViewerやフォームブリッジで形を作っていこうと検討中です」(大賀氏)
Garoon(ガルーン)内のリンクをアクセス後、自身の情報を確認することができる
Garoon(ガルーン)内のリンクをアクセス後、自身の情報を確認することができる
作業の効率化に加え担当者の心理的ストレスの軽減に成功
ID・パスワードによる認証方法を採用していた頃は、平均してひと月に10~20件ほどログイン方法やID・パスワードについての問い合わせがあったそうです。それがToyokumo kintoneApp認証機能を利用することで、現在では問い合わせが0になり、担当者の負担も大幅に軽減されたとのことです。問い合わせを受けていたチームから、「問い合わせが減って楽になった、嬉しい」という声が上がっていると言います。
「大学なので、毎年4年生が卒業し1年生が入学してきます。つまり4年生約800名のデータを3月に削除し、4月には新入生800名のデータを登録するわけです。民間企業と違い、数百人単位で出入りがある教育機関にとっては、そういった管理が『Toyokumo kintoneApp認証』を活用することで簡単に管理できるのは大きなメリットですよね。登録情報は自動更新されるので、本当にムダな作業が省けて楽になりました」(大賀氏)
現状「Toyokumo kintoneApp認証」機能を活用しているのは教職員のみですが、今後学生にも拡充していくことを考えると、人の入れ替えが多い教育機関においては非常に有用であると感じているそうです。
例えば利用するアプリが50個ある場合、ID・パスワードを使用した認証形式であれば1人につき50回の登録と削除作業が必要となります。「Toyokumo kintoneApp認証」機能であれば1人につき1メールアドレスの管理で完結するため、大学としてもアプリを増やして活用していく方向で進めているとのことです。
「大学では教職員の出入りも激しく、入退職に合わせて名前を検索してデータを追加・削除するという作業を繰り返すのが本当に手間でした。ただ、それよりも精神的な負担が大きいんですね。とにかく面倒、途中で電話が入ると削除漏れにもつながる、全員分完了したか確認できない、そういった不安がなくなったというのは担当者にとっては非常に大きなメリットです」(大賀氏)
入退職に合わせたデータ管理作業は、時間としては15~20分程度のものですが、とにかく手間がかかる上、確実にこなさなければならないという緊張感を伴った作業となるため、担当者にとって精神的に大きな負担となっていたそうです。それが「Toyokumo kintoneApp認証」機能を導入したことにより「kintoneApp認証ならやってみようかな」といった前向きな姿勢に変わったといいます。いくつもの工数をかけて行っていた面倒な作業が、たったワンステップ、ストレスフリーで完了するのはマスタ管理者にとってはこの上ない機能だと感じているとのことです。
最後に、今後の展望について伺いました。
「kintoneのシステムとトヨクモの製品という組み合わせに非常に高い効果を感じています。とくに「Toyokumo kintoneApp認証」機能は、ユーザー側からすると非常に便利、一方の管理側も楽にセキュアな運用ができるということで安心して活用できると思います。今は250名ほどの教職員をユーザーとして運用していますが、今後はぜひ3,000名ほどの学生も対象に広げていきたいです」(大賀氏)
記事公開日:2023年7月12日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります