300分の雑務をkintone導入で0分に!トヨクモ連携サービスでさらに900分の作業時間削減に成功した活用法
神奈川県南足柄市役所の行政改革班では、その名のとおり行政内部の改革をメインに取り組んでいます。また、公共施設のマネジメントや指定管理者制度、職員提案制度など全庁に関わる幅広い業務を取り扱っています。
データのExcel転記やミスがないかのダブルチェック、複数回に分けてメールを送信するといった雑務をなくすためにkintoneを導入。kintoneを活用してDXを推進している地方自治体のモデルケースを学ぶうちに、kintoneの機能を拡張することでより全庁的な業務改善を図れると実感し、2023年よりトヨクモが提供するFormBridge、kViewer、PrintCreatorを導入いただいております。
本記事では、定常的に発生する業務効率を見直すことで合計1200分(=約20時間)以上の作業時間削減に貢献した南足柄市役所 企画部 企画課 行政改革班・太田優平氏よりお話を伺いました。
南足柄市役所 企画部 企画課 行政改革班・太田優平氏
データのExcel転記やダブルチェックに費やしていた300分の作業時間をkintone導入で0分に
「自分の部署は庁内の取りまとめや総括を行う機会が多く、中でも照会業務は業務フローに多くの課題がありました」と太田氏は振り返ります。南足柄市役所には30近くの課があり、照会業務は以下のフローを課の数だけ行う必要がありました。
1. 回答用Excelを用意し、各課へメールで送信(行革班)
2. 回答を記入し、内容の決裁を取って行革班へ提出(各課担当者)
3. 回答を集計用Excelに手動で転記(行革班)
4. 集計用Excelの転記にミスがないか、ダブルチェック(行革班)
さらに、提出された回答内容が意図とは異なっていたり、誤りがあったりすることも少なくありません。そのような場合、このフローに加えて回答の修正を依頼し、再び決裁を取る……といった作業も増えます。
メール送信や転記といった雑務にかかる作業時間は1課あたり約10分。1つの照会業務につき雑務だけで300分の作業時間が発生していました。
実際に照会業務で使用されていた、膨大な数のExcelデータの一部
太田氏が所属する行政改革班は2名体制で、それぞれが異なる照会業務を担当していたため、班全体で考えると膨大な時間を雑務に費やしていることが喫緊の課題となっていました。
そんな中、サイボウズ社の「全国の自治体まるごとDX化キントーン1年間無償キャンペーン(現在は終了)」当選をきっかけに、kintoneを導入。各課の担当者にアカウントを付与し、照会業務の回答フォームをkintoneで用意しました。すると、照会業務のフローは以下のように簡略化されました。
1. 各課にkintoneのフォームから照会業務の回答をするようメールで一括依頼(行革班)
2. kintone上で回答を作成し、決裁が降りたらフォーム提出(各課担当者)
3. 提出されたフォームのデータはそのままkintone上に自動登録され、転記や集計作業は不要(行革班)
結果、300分かかっていた取りまとめが0分で完了するようになりました。また、フォーム提出前でも各課の回答状況をリアルタイムで把握できるようになったことで、記入ミスの指摘や修正フォローを随時行えるようになり、回答提出後の戻しを減らすことにも成功しています。
各課の提出状況や回答内容の確認も一つの画面で行える
庁内全体でkintoneを導入するハードルが高い中で、庁内全体の雑務削減を推進する必要性があった
太田氏は更なる雑務削減に取り組むべく、kintoneを活用した業務改善事例を調べるようになりました。庁内には全職員に共通して発生する紙主体の業務が非常に多く、DXを推進することで解決できる可能性を見出していたそうです。
しかし、太田氏はkintoneの市役所全体での導入はハードルが高いことを懸念していました。「全職員を対象としたkintoneの導入は、予算面と一部職員の心理面でかなりハードルが高いと思いました。予算の都合上、kintoneのアカウントはどうしても対象となる職員を絞って付与することになります。仮に予算の問題をクリアしたとしても、デジタルに抵抗感を持つ職員も少なくないため、浸透に時間がかかると感じていました」(太田氏)
さらに、モデルケースとなっていた業務改善事例の多くがプラグインや連携サービスの活用をしており、kintone単体で解決できる範囲には限界があると判断しました。
そのため、kintoneを導入した初期段階からプラグインや連携サービスの活用を見据え、太田氏は情報収集を開始。「全職員がkintoneアカウントを持っていなくても、庁内の雑務が減らせる」という点が大きな決め手となり、トヨクモの連携サービスを導入いただきました。
FormBridge×kViewerのルックアップ機能を活用し、物品在庫の管理や庁内アンケートをデジタル化
FormBridgeとkViewerを導入して改善に取り組んでいる業務の一つに物品在庫の管理があります。
これまでは起案に使用する用紙やホッチキスといった物品の管理を物品管理簿で行っていました。物品管理簿は物品一覧表1枚と各物品の入出を記載する用紙を1物品につき約2枚、それを36種類分印刷して簿冊に綴って作成したもので、庁内8エリアに1冊ずつ設置していました。
実際に使用されていた物品管理簿
職員は、何か1つ物品を使用するたびに物品管理簿に必要事項を記入する必要がありました。そのため、物品在庫の増減把握や不足している物品の要求などは、毎月決まった日に物品管理簿を1ページずつ確認しながら計算するというアナログな手法で対応していました。
物品ごとに管理番号が振られており、対応するページに記入する必要があった
そこで、FormBridgeで物品管理リストをフォーム化し、使用の際はQRコードからフォームに遷移し、物品の入出記録をスマートフォンやパソコンから行う方式で実装しました。
FormBridgeで作成した「消耗品出納簿」
さらに、kViewerと連携させ、kViewerルックアップ機能をフォームに搭載。使用する物品に対応する数字を選択するだけで、物品名や前回残高などの情報がフォームに自動挿入されるように実装しました。
参考ページ|「kintoneで物品購入申請もラクラク〜kViewerルックアップ機能を活用」
「No.」を選択すると品名や単位、物品払出前の残高が自動で設定される
特に、kViewerルックアップで前回残高が表示されることで、払出数を入力するだけで払出後の残高まで算出されるようになり、計算にかかっていた時間の大幅な削減に大きく貢献します。
FormbridgeとkViewerを導入することで、物品管理簿に使用していた約600枚ほどの紙が不要となり、管理簿の作成から各職員による入出記録、不足物品の確認や計算にかかっていた585分(9時間45分)の作業時間が削減できました。
また、健康づくり課が実施していた健康診断未受診者に対するアンケートもこれまで紙で行っており、集計作業に時間がかかるという課題がありました。そこで、物品管理と同様に紙のアンケートをFormBridgeに置き換えました。
実際のアンケート画面
記入者の手間を省くだけでなく、回答内容がそのままkintoneのマスタアプリに登録されるようになったため、アンケートの集計作業にかかる時間が30分~1時間ほど削減されました。
添付容量に制限があり複数回のメールに分けて送っていたデータをkViewerで一括共有
行政改革班では、データの容量が大きい資料共有の手段としてもkViewerを活用いただいております。
南足柄市役所では、一回のメールで添付できるデータの上限が15MBで、データのやり取りに不便な思いをする場面が数多くあったようです。一例として、画像がたくさん使われている資料や図面などは、容量が15MBを超えることがあるため、メールで送付するにはデータを三分割しなければいけません。
分けて送る手間はもちろん、資料の中身は一続きのもので、中途半端なところで分けてしまうことで内容が正しく伝わらないといったリスクも懸念されており、データを一括で送れるようにする必要がありました。
そこで、太田氏は共有したい資料をまずkintone上にアップロードし、そのページをkViewerで閲覧できるようURLを発行しました。結果、メールでURLさえ共有すればスピーディーに資料を共有できるようになりました。
各資料の説明も記載できるため、どの資料に何が書いてあるのか一目瞭然
具体的には分割送信にかかっていた作業時間が一件につき約10分削減、同様のやりとりが月15回ほどあったため、合計すると約150分(約2時間30分)の短縮につながりました。
照会業務の起案に必要な添付資料も、PrintCreatorならボタンひとつで出力可能
kintoneで大幅に業務フローを改善した照会業務ですが、依然として一部のフローでアナログな対応を求められていたため、PrintCreatorを導入することでよりスムーズな対応を実現しました。
kintone導入時点で各担当者の照会業務の対応効率化は実現したものの、起案の決裁者である課長などはkintoneのアカウントが付与されていないため、kintone上で照会業務における記入内容を確認できませんでした。
そのため、kintoneの画面を確認できるデータを起案の際に添付する必要があったものの、kintone画面をスクリーンショットしてそのまま印刷すると見た目が悪く、場合によっては横幅が見切れてしまうこともありました。そのため、Wordにスクリーンショットを添付し、それを保存したデータを添付するという雑務が生じていたのです。
そこで、PrintCreatorであらかじめ起案用の様式を用意しました。照会業務の回答が完了したあとはkintoneの画面上から出力ボタンを押すだけでPDFが出力されるようになり、それをそのまま起案に添付できるようになりました。
「起案用出力」を選択し、出力ボタンを押せば完了する
これまでのWordにスクリーンショットを添付し、ファイル名をつけて保存という一連の流れには1つの画面につき5分かかっていました。起案は全部で30近くある課それぞれで行う必要があるため、庁内全体で見ると約150分(=2時間半)の雑務削減に貢献しています。
「小さな業務改善」を積み重ね、重要度の高い業務に集中できる環境に改善したい
太田氏は「実際に雑務が減ったことで行政改革班のメイン業務である業務改善の検討など、『答えのない業務』のために使える時間が増えました。内部の会議や施策の検討期間にゆとりができたことは、削減した1200分以上の価値があると思います」と、kintoneおよびトヨクモの連携サービスの導入に手応えを感じています。
今後の展望として、太田氏は若手職員を筆頭にボトムアップでDX推進を継続的に進めたいと話します。
「kintone、トヨクモの連携サービスともに基本的な機能しか活用できていない上に、全庁的な導入には壁がありますね。直近の目標として、まずはデジタルに親しみやすい若手職員を中心に、プラグインを含めた使い方の研修を実施して、少しずつ庁内でデジタル化の動きを浸透させていきたいです」
一つひとつの雑務にかかる時間や手間はちょっとしたことでも、それらの改善を積み重ねることで、大幅な作業時間削減に成功した太田氏。今後も全庁の業務に関わる課題の改善に取り組んでいくために、kintoneと連携サービスのさらなる活用に前向きな姿勢を見せました。
記事公開日:2024年2月29日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります