市役所内に寄せられる相談をkintone x トヨクモ製品で続々と解決した川口市役所
埼玉県にある川口市役所では約3300名が働いており、その中の企画財政部 情報政策課では情報施策に係る総合的な企画および調整を行っています。2023年3月31日には、デジタル技術を活用して川口市の課題を解決するため、「川口市DX推進指針(2023-2026)」を策定しました。行政手続きのオンライン化はもちろん、契約事務の電子化やシステムの内製化も掲げられており、DXに向け積極的に取り組んでいます。
「kintone」の導入は2020年4月のことです。5月から「川口市小規模事業者等事業継続緊急支援金」の給付を開始するのですが、給付対象である市内の1万6000社から、問い合わせが殺到することが目に見えていました。その対応システムを「kintone」とトヨクモ製品を組み合わせ、たった3日で構築したのです。
その後も、「kintone」×「フォームブリッジ」「kViewer」「プリントクリエイター」「kMailer」「kBackup」を使って、様々な業務アプリを開発し、活用されています。
今回は、川口市役所で「Excel」や「Access」から、「kintone」×トヨクモ製品で様々な業務改善を実現した経緯と効果について、企画財政部 情報政策課 清水公一氏、会田裕貴氏、栗原和也氏にお話を伺いました。
川口市役所 企画財政部 情報政策課 清水公一氏、会田裕貴氏、栗原和也氏。
1万6000社からの進捗確認問い合わせをフォームブリッジ&kViewerで対応
市役所では住基や税などを管理する基幹系はパッケージ化されたシステムで運用されています。しかし、それらのシステムでは対応できない、個別の業務に関しては、マクロやVBAに詳しい職員が独自で「Excel」や「Access」を駆使して対応していました。
自治体は3~5年くらいのスパンで人事異動がありますが、その際に、それらの仕組みを作ったITに詳しい職員がいなくなってしまうことがあります。そうなると、制度が変わったり、業務にわずかな変更があっただけで、メンテナンスすることができず、「Excel」や「Access」が使えなくなってしまいます。
「各部署から情報政策課に相談が来るのですが、個別の業務に詳しいわけではないですし、マクロやVBAの解析や改修に時間がかかってしまうという課題がありました。特に、コロナ禍で新しく始める業務が増え、『Excel』や『Access』が乱立し始めたのです」(会田氏)
異動の際の引継ぎに課題があったので、ローコード・ノーコードツールの情報を集め始めました。その中で「kintone」のことを知ったそうです。
そんな時に、「川口市小規模事業者等事業継続緊急支援金」の給付が2020年5月から開始することがわかりました。給付の対象企業は約1万6000社と多く、担当課は「Excel」で管理するのは無理があると考えました。緊急支援金なので企業としては少しでも早くお金を受け取りたいと考えています。そのため、申請と入金の状況に関する問い合わせが殺到することが予想され、情報政策課に相談がきました。
同じ時期に「kintone」について調べていたこともあり、「kintone」ならさまざまな課題に対応できそうだ、と導入することを決めたそうです。
「『kintone』で申請の進捗状況を管理するアプリを作り、『フォームブリッジ』と『kViewer』を使って、企業が自分でウェブサイトにアクセスし、申請の進捗を確認できるようにしました。管理アプリだけでも『Access』で作っていたら2週間以上かかる内容でしたが、『kintone』とトヨクモ製品を組み合わせて、3日で完成しました」(会田氏)
支援金の給付が始まると、進捗の確認サイトには多い日で1日300件のアクセスがありました。システムなしで運用した場合、その分の電話が担当課にかかってきたことを考えれば、導入効果はとても大きいと言えるでしょう。24時間、好きなタイミングで進捗を確認できるので、市民側にも大きなメリットがあったと言います。
緊急支援金の進捗を確認できるフォームです。
トヨクモ製品で業務をアプリ化して業務効率を改善
ー 慰労金給付業務
緊急支援金アプリの成功を受け、次々と業務アプリが作られていくことになります。例えば、子ども部からは慰労金給付業務について相談がありました。保育所や幼稚園、小学校の学童などで担当する課が分かれているため、7課にまたがって審査する必要があり、以前は紙で処理していたそうです。しかし、複数の課に紙を回し、最後に取りまとめてチェックする作業がとても大変だったそうです。
「『kintone』とトヨクモ製品を使えば、電子申請できるのではないか、と考えました。『フォームブリッジ』で申請データを溜めて、『kintone』の中で審査してしまえば、アプリ内で完結します。また、『フォームブリッジ』で入力規則を設定することで、申請不備もなくしました。アプリ化してペーパーレス化したことで、業務の効率化ができてよかったという声が寄せられました」(会田氏)
最終的に、決定通知書は紙が必要になるのですが、こちらは「プリントクリエイター」で出力できるようにしました。
慰労金の申請をフォームブリッジから行えるようにしました。
こちらのPDFの空欄箇所に、kintone内のデータを出力可能です。
ー 公用車運転日報
公用車の管理も紙で行っていたそうです。1台の公用車ごとにA4のファイルが用意され、運転し終わった時に、何月何日何時にどこへ行ったのかを紙に書いていたのです。走行距離や給油量も全部手書きで記録し、その記録を毎年総務担当が電卓をたたいて集計していました。公用車は何百台もあるので、とんでもない手間がかかっていたそうです。
そこで、「公用車運転日報」アプリを作り、手書きで書いていた内容を「フォームブリッジ」で入力できるようにしました。車両番号を入力すると、車両の情報や前回までの走行距離を自動でルックアップして引用するなど、できるだけ入力個所を少なくする工夫も凝らされています。車の中でスマホで簡単に入力できるので、運転者も作業が格段と楽になり、管理する総務側の手間も大幅に軽減できたそうです。
公用車の日報は「kViewerルックアップ」を活用してペーパーレス化しました。
ー コロナワクチンの配送業務
コロナワクチンの配送業務でも「kintone」×トヨクモ製品が活躍していました。コロナワクチンの接種が始まった頃は、流通量が少なく、どの病院にどのくらいのワクチンを送るのかを逐一、各医療機関に通知していたそうです。
ワクチン配送を管理しているExcelから、医療機関ごとの配送予定量のリストを作成できます。しかし、それを見ながら、多数の医療機関に手打ちでメールを作成し、送信するのはとても手間がかかりますし、配送予定量を間違える危険性もあります。そこで、ワクチン接種推進室から情報政策課に相談があり、アプリ化することになったのです。
ここで活用したのが、「kMailer」です。配送予定量のリストを「kintone」に取り込み、ボタン一つで約190か所の医療機関にメールを送信できるようにしたそうです。
多数の医療機関に簡単にワクチンの送付量をメールできるようになりました。
ー 物価高騰対策支援金管理
「物価高騰対策支援金管理」アプリは栗原氏が開発しました。訪問介護やデイサービスなどを提供している介護保険の事業者が物価高騰による影響を受けているということで、補助金を出すことになったのです。市内には約800の事業所があり、申請自体は別のシステムを使って受け付けていました。
そして、その申請データをkintoneにインポートし、書類に不備があった事業所の管理をkintoneで管理されていました。ただ管理するだけでは意味がないため、「kMailer」を利用し、不備のあった事業所に一括でメールを送信し、再度書類提出を求める工夫をされていました。これにより、別に導入しているメールシステムを使用する手間が省け、管理とメール送信を一括で完結できるようなったそうです。
ー 障がい者支援業務
また最近、障害福祉課から依頼があったそうです。障がいのある方を介護している人に何かあった時に、障がいのある方が置き去りになってしまうことを防ぎたい、という相談です。必要な支援が受けられない状態になると困るので、協力してくれる事業者と情報を共有するアプリを作成している最中とのことでした。
「協力してくれる事業者にkintoneアカウントを払い出すことはできないので、『フォームブリッジ』と『kViewer』を使っています。今年度中に運用を開始する予定です」(清水氏)
「kBackup」も利用されています。誤操作でkintoneのレコードを消してしまうと困るので、導入したそうです。幸い、「kBackup」を利用しなければならないような大きなトラブルはまだ起きていないとのことです。
トヨクモ製品について、お三方に感想を伺いました。
「トヨクモ製品は『kintone』のアカウントがなくても、『kintone』内のデータを閲覧・登録・編集できるというところがありがたいです。自治体では、どうしてもセキュリティ上、『kintone』に色々とアクセス制限をかけてしまうのですが、『フォームブリッジ』や『kViewer』はそこを乗り越えられるので、とても使いやすいです」(会田氏)
「各課から相談を受けるのですが、『kintone』だけで対応できる話はほとんどありません。トヨクモさんの製品なくして、各課の相談を受けきることはできないので、とてもありがたい製品ですね」(栗原氏)
「『kintone』だけだったら、ここまで庁内に展開できませんでした。『kintone』単体では、痒い所に手が届かないというか、やりたいことを網羅するためには、トヨクモさんの製品群を利用しないといけないシーンが多いな、と感じております」(清水氏)
最後に今後の展望についてお伺いしました。
「まだまだ庁内の申請や照会において紙やExcelが使用されています。本来であれば全職員にkintoneアカウントを配布し、kintoneに直接入力等してもらいたいですが、用意することが難しいため、『フォームブリッジ』や『kViewer』を活用し、徐々にkintoneに置き換えていきたいと考えてます」と会田氏は締めてくれました。
記事公開日:2023年8月14日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります