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尼崎市役所 様

職員約3,000人の健康診断予約システムを1日で構築、庁内のDX化を展開する尼崎市役所



 尼崎市は、兵庫県の南東に位置し、人口約45万人の中核市です。阪神電車、JR、阪急電車が東西に走っていて、大阪や神戸、京都や奈良へも乗り換えなしでアクセスできます。
関西3空港へも1時間以内で移動できる交通の便がとても良いまちです。平成28年には、市制施行100周年を迎えました。

今回は、「kintone」と「フォームブリッジ」「kViewer」「kMailer」「データコレクト」を組み合わせて、次々と業務改善を実現された取り組みについて、行政マネジメント部デジタル推進課の橋本氏と松井氏にお話を伺いました。


行政マネジメント部デジタル推進課 松井氏 橋本氏


地方公共団体のkintone活用方法を知りkintoneとトヨクモ製品の導入を決めた


 現在地方自治体が置かれている状況は、”紙中心の業務”、”土日は対応してもらえない”といった古い役所文化に加え、社会的には少子高齢化による労働人口の減少、2040年問題とされる、社会保障及び関連する事務量の増大など、目先の業務量は増える一方だったそうです。

「業務量は増える傾向にありながら、働き手は減少し業務内容は非効率のままです。そういった状況下で、地方公共団体はDXを旗印に、デジタルの力で事務の効率化や住民サービスの向上に取り組んでいます。そんな背景がある中で、私たちはkintoneを導入しました。」(橋本氏)

 地方自治体では、基本的に何かしらシステムを導入する時には、まず予算要求を行い、次年度の予算を確保した上で、次年度になってから調達する必要があり、導入までに非常に時間がかかる難点があるそうです。

kintoneであれば、ライセンスさえあれば、即座にアプリ構築ができ、アプリの内容に修正が入った場合でも、その場で修正ができるといった点が大きな利点だったそうです。価格帯については、保守ベンダーへの依頼は不要となるため、より安価に利用ができたとのことです。

「kintoneやトヨクモ製品の導入は、他の地方公共団体が利用していると知ったのがきっかけでした。例えば加古川市の臨時特別給付金を、kintoneとトヨクモ製品を用いて申請を行った事例や、大阪府が新型コロナウィルス感染症の増加により、事務業務の爆発的な増加を緩和させるため、kintoneを用いて内部管理用のアプリを作成された事例など、相次いで優良事例として取り上げられていました。これらの事例は、緊急時に即時アプリ作成ができるという点とベンダーでなく職員が簡単な操作で対応できるという点から、本市でもぜひ導入したいと考えました」(橋本氏)

 同時期に、当時の市長より新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、市民向け総合相談窓口開設の指示があり、当初担当部署が専用パッケージを中心に検討を進めていましたが、この機会にkintoneを導入できないかと担当部署に働きかけ、導入に至ったそうです。

職員約3,000人を対象とする健康診断の予約システムを1日で構築


 尼崎市役所では、各種申請業務やイベント申請などをフォームブリッジで申し込みを受け付けています。

「人数制限のない講習会やセミナー、アンケートであれば、フォームブリッジから登録してもらい、kintoneで情報を管理することで完結できます。『この講習会は、まだ予約できますか?上限数には達していないですか?』といった問い合わせには、フォームブリッジ側で申し込み数の制限を設定することで回避できます。但し予約時にリアルタイムで残りの枠数を確認したい、途中で申し込み後にキャンセルが入った場合の対応をなんとかできないかと考えました。」(橋本氏)

 尼崎市役所では、既にフォームブリッジやkViewerといったトヨクモ製品を活用されていたため、データコレクトは、アプリ間の自動集計が可能なサービスということを知っていたそうです。トヨクモが提供するブログ記事などから、データコレクトを組み合わせることで、予約システムの残数集計ができることを確認し、お試し環境で機能や操作感を実際に体感し、導入を決められたそうです。

 尼崎市役所では、単発のイベント開催以外にも、毎週◯曜日の◯◯時〜◯◯時まで実施といった、定期的に行うイベントがあるそうです。このように定期的に実施する予約申請には、kViewerのカレンダービューから希望日時を選択し、フォームブリッジに遷移し予約を行う、その際に希望した日時の予約枠に対する残数をデータコレクトで自動集計する運用を行なっているそうです。

「直近では、庁内の健康診断用に予約システムを構築しました。導入前に行っていた健康診断の予約申請方法は、Excelで管理するシートを開いて各々が健康診断を実施したい日時の箇所に入力するといった運用でした。この運用を行っていた時は、”予約したデータが上書きされてしまった”、1人が複数の枠を登録することができてしまうため、”予約枠数に限りのある日時でも、1人に複数日占有されてしまう”といった問題発生し、課題に感じていました」(松井氏)

 Excelで管理していた、健康診断の予約申請の運用では、「自分が予約した日時を忘れて当日行かなかった」「Excelでうまく登録ができない」「複数予約があるから、予約枠が埋まっているのか曖昧で分からない」など職員からの問い合わせが絶えなかったとのことです。そこで、データコレクトを活用し、受診枠の残数を自動集計し、予約者がリアルタイムに確認できるシステムを構築したそうです。

「健康診断の予約申請で工夫した点は、Toyokumo kintoneApp認証を組み合わせて活用した点です。職員は3600人くらいいますが、健康診断の対象者はそのうちの3000人くらいです。健康診断の通知は全職員向けに公開するため、健康診断の対象でない職員が、Excelから登録を行なってしまうということもあり、対象者だけが申請できる運用にしたかったのです。その点でToyokumo kintoneApp認証は、セキュアなだけでなく対象者以外がログインしようとするとエラーになりアクセスすることができないため、対象者だけがログインして申請ができる運用になりました」(松井氏)

ー 健康診断予約システムの利用方法

1.Toyokumo kintoneApp認証のログイン画面から、メールアドレスを入力

アクセスを行うとToyokumo kintoneApp認証のログイン画面が表示されます


2. 1で登録したメールアドレス宛にログイン用URLが送信


本文内のログインリンクからログインを行います。


3. 健康診断の希望日時をkViewerのカレンダービューで表示


男女で予約枠が異なり、日によって健康診断を行う会場が異なります


4. カレンダービューで、希望日時の項目を選択

データコレクトで残り枠数を集計しているため、上限人数/残り枠数を確認することができます。


5. 「予約する」ボタンをクリックし、フォームブリッジの予約画面に遷移

職員情報をマスタ情報から引用して入力の手間を省くことができます


6. 自動返信メールで登録を行なった内容の確認

自動返信メールの本文に、予約日時、会場、マイページURLが記載されています


7. 自動返信メールのマイページのURLから、自身の情報の確認が可能



 また予約システムには、kMailerも活用しており、健康診断予約日の3日前にリマインドメールを自動で送付する運用も加え、当日忘れて健康診断に行かなかったということを防ぐことができているそうです。

リマインドメールを自動送信すること、予約日の誤認識や予約忘れを防ぐことができました。


 予約の申請を行うと、リマインドメールに予約の詳細に加え、持ち物なども確認できるよう設定をされています。システムの管理者側の設定では、予めメール本文のテンプレートを作成することで、テンプレートを選択するだけで、kintoneで管理する予約内容や職員情報をメールに引用してメールを送信することができます。

管理者の設定画面では、 kintone側に表示されるボタンから、簡単に送信の設定が可能です。


 予約した日程がもし都合が悪くなった場合に備えて、キャンセル対応も設定されているそうです。キャンセルフォームから登録を行うことで、キャンセルメールが手元に届き、キャンセルが完了します。



キャンセルフォームからキャンセル登録を行うと、kintoneアプリ側で「キャンセル済み」と登録され、データコレクトで枠数の残数もリアルタイムに反映される仕様となっているそうです。

キャンセルフォームから登録される、kintoneアプリ画面です。


 「kintoneとトヨクモ製品導入前のExcelでの運用時は、職員からの問い合わせが、毎日1時間おきに『Excelファイルが開ない』『上書き保存されて予約が消えてしまった』などの問い合わせの電話が寄せられていました。それが、kitnoneとトヨクモ製品で構築した予約システムで運用するようになり、問い合わせの対応がほぼゼロになり、電話対応していた時間を他の業務に当てられるようになり負担が軽減したと担当部署から聞いています」(松井氏)

ここまで大きな予約システムの構築に費やした時間は、たったの約1日だそうです。データコレクトの導入時、お試し環境を活用し、トヨクモが提供するブログなどを参考に、既に予約システムを一度作成したことがあったそうです。そのため導入後もスムーズに構築ができたといいます。

「操作も直感的であまり躓くことなく、システムを構築できました。構築後はきちんと運用ができるのか、リマインドは漏れなく送られるのかなど、運用に不備がないかのテスト期間を2週間ほど儲けて、慎重に確認してからリリースしました」(松井氏)

 そのほかにも、市民の方向けのイベント予約申請では、小学生向けのダンス教室や様々なセミナーを定期的に実施しています。それらのイベントは40種類ほどに渡るため、健康診断の予約システムの運用を参考に、kViewerのカレンダービューではなく、セグメントビューを表示させて、よりイベントの名称が見やすくなるよう、応用されていました。定員数や残りの枠数の表示だけでなく、予約の可否ついても画面上で即時に確認できるよう設定されています。

スマートフォンでも表示することが可能です。


「kViewerを導入する前は、電話やFAXで申請を受け付けていました。この予約システムを実装したことによって、職員の対応時間の短縮や工数削減に繋がったことはもちろん嬉しいのですが、DX化を進めていくことで、職員だけでなく市民の方に対しても、土日など市役所が休みの日でも気にせずに、ご自身が都合のいいタイミングで申請ができるようになったことも、導入してよかったと思っています」(橋本氏)

kViewerで業務改善を可視化して庁内のDX化が進んだ


 尼崎市役所では、kViewerのカードビューを活用して、庁内向けの業務改善ポータルを構成しています。実際に庁内でどのようにkintoneやトヨクモ製品を活用しているのかを可視化することで、「こんな使い方ができるんだ」と知ってもらい、庁内全体でDX化の意識を向上する目的があったそうです。業務改善ポータルを作成したことで、庁内でkintoneを活用した業務数がアップしたそうです。こちらは、kintoneアプリが4つ、それに紐づくkViewerのビューが4種類、フォームブリッジの2つのフォームを連携して活用しています。

「業務改善ポータルでは、「アンケート・調査」や「管理(台帳)」などの項目を、1つのカードとして表示しています。カード(レコード詳細)を開くと、別のkViewerに遷移するリンクが記載されており、各項目に関する庁内での導入事例を絞り込んで表示し、自分の抱えている業務と似た事例を見つけやすいように設定しています。例えば、アンケート・調査カードから別kViewerのリンクを開くと、アンケート業務や調査業務にkintoneやプラグインを活用した事例のみ表示されます。

 ポータル画面では、画面上部のヘッダー部分に、タイトル表記と説明書きを記載しています。左側にはサイドコンテンツとしてメニュー項目を設置し、一覧のトップページから誰でも簡単に対象ページへ遷移できるようにしています」(松井氏)



「例えば、サイドコンテンツの『kintoneって?』というリンクからは、kintoneの概要についての動画へ遷移し、「練習用スペース」のリンクは、誰もがアプリを自由に作成できるスペースを用意しています。

『利用申請』のリンクからは、kintoneやプラグインを活用した業務内容や、導入後の効果時間などを利用申請という形で登録してもらい、登録された情報はkViewerで職員なら誰でも一覧として見ることができるようにし、庁内への広報としています。『マニュアル』は、kViewerのリストビューの一覧画面を表示させており、現在作成中となります。」(松井氏)



「最後に『お知らせ』では、”このプラグインを使うと、こんなことができるよ”と紹介している画面です。庁内で導入事例の多いものをピックアップして表示し、その中にある”アンケート調査のビュー”では、イメージが湧きやすいように分かりやすい実例とともに紹介しています。

 こういった実際の業務改善を行った事例を庁内で共有することで、『私の課でもkintoneを活用できますか?』と庁内でのDX化の意識が進むようになりました。実際に、業務改善ポータルを公開後、現在約100業務にkintoneやトヨクモ製品を導入することになりました」(松井氏)


最後に今後の展望についてお伺いしました。


 現在尼崎市役所では、これだけ大きな業務改善などのシステム業務を、約3名の職員が中心に設定や構築などを行っているそうです。

「引き続き、庁内でのkintoneトヨクモ製品を含む連携サービスを活用して、より広く庁内へDX化を展開していきたいと考えています。さらに、情報部門の職員だけがkintoneや連携サービスに詳しくなるのではなく、庁内全体で業務改善が行えるような人材を増やしていくことも必要であると考えています」(松井氏)

「今回構築した庁内向けの健康診断の予約システムを通して、実際に職員がシステムを利用者側として使っているので、”健康診断で使った時のシステムを今度は自分の部署で活用できないかな”と、思ってもらえると嬉しいですね。システムに関する人材育成については勉強会なども実施して今後さらに市民の方との時間を確保するためにも、業務改善を広げていきたいと考えています」(橋本氏)

記事公開日:2023年10月16日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります