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市役所への各種手続き・申し込みをオンライン化!kintone導入で業務改善とサービスの質向上を両立させた活用事例

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 北海道旭川市では人口減少や少子高齢化が進む中、将来を見据えて行政サービス向上と業務効率化を両立するためにデジタル化を推進しています。2021年度より「旭川市デジタル化推進方針」を策定し、今津寛介市長のリーダーシップのもと、CDO(最高デジタル責任者)の設置などを進めており、2023年4月には旭川市役所に行財政改革推進部を新設しました。将来に負担を残さないための行財政改革(DX、業務改善、歳入確保、歳出抑制など)が行財政改革推進部のミッションです。

全庁業務量調査の結果、紙を使用していたことによる「確認・入力・抽出・加工・印刷」などの中間作業の多さが最大の課題と発覚しました。ペーパーレス化・オンライン化を促進するためkintone(キントーン)を導入。さらなる業務フローの簡略化や自動化を進めるために、トヨクモの連携サービスもあわせて導入いただいております。

本記事では、全庁的なDX推進を担う旭川市役所 行財政改革推進部 行政改革課・水沢悠氏と、観光スポーツ交流部スポーツ課の赤坂満帆氏よりお話を伺いました。


労働人口が減少していく中でも業務効率化・サービス向上を両立させるためにkintoneとトヨクモの連携サービスを導入

 kintone導入前の課題は「中間作業による業務効率の低さ」


 「調査の結果、専門性が不要で定型的な業務が全業務の42.3%を占めていることが明らかになりました。市役所の業務の共通課題として、紙中心の業務フローになっていることなどから『確認・入力・抽出・加工・印刷などの中間作業(メインとなる意思決定等の間にある単純作業)』が多いため、非効率な工程が多くなっていることに気づきました」と水沢氏は振り返ります。

旭川市におけるコア/ノンコア業務の割合(※令和2年度調査)


さらに、今津寛介市長は、2040年問題から目を逸らさず、行政サービスの質向上と業務効率の改善を両立するために「日本一のデジタル都市を目指す」と宣言。

水沢氏は、解決策を模索するべく地域情報化アドバイザー派遣制度を活用する中で、「職員一人一人が自分の業務で取り組めるDX」の手段として、ノーコードツールの重要性を認識したそうです。そこで、感覚的な操作感と自治体での導入事例が豊富な点を評価し、kintoneを導入しました。

まずは紙やExcelなどで管理していたデータをkintoneに集約し、データベースとして運用しました。従来の方法で多発していた重いExcelの処理待ちや編集の順番待ち、点在している情報から必要なものや最新版のデータを探す時間が削減されました。さらに、データの破損といったリスクも下がりました。

トヨクモの連携サービスを導入した決め手は「業務フローに応じた柔軟な拡張性」


「実は、kintone単体の運用は当初からあまり考えていませんでした。というのも、kintone単体では、先に判明した中間作業を削減できる場面が限定的な運用になってしまうため、連携サービスやプラグインありきで機能を拡張させ、各業務に合わせた業務フローの見直しを図る必要があると感じていました」

水沢氏は自治体のDX先進事例を学ぶ中で、個別業務のフローを分析し、それぞれに異なる業務課題を明らかにし、そこに対応していくというオーダーメイドの課題解決を求めていました。そんな中、サイボウズ社主催のkintone活用にまつわる研修に参加し、トヨクモの連携サービスに触れる機会があったそうです。

「実際にトヨクモの連携サービスを触り、現場での活用イメージが具体的に湧いたのが大きかったですね。トヨクモ連携サービスなら、オンライン化の推進や、kintoneアカウントを持たない関係者を巻き込んだ業務フロー全体の改善といった細かなニーズにも対応できると感じました」


水沢氏はkintoneに続き、2023年6月よりトヨクモが提供するFormBridgekViewerPrintCreatorも導入しました。

FormBridge×kViewer×PrintCreatorの連携で就学・教育相談アプリを開発。相談にまつわる全ての作業をオンライン化


 紙ベースの業務フローによる中間作業の多さを、kintoneと連携サービスの活用により削減し、業務改善に成功した代表例が「就学・教育相談アプリ」の運用になります。導入前の就学・教育相談の大まかなフローは下記の通りです。

1.  申請者である保護者が教育委員会宛に相談を申し込む(郵送、来庁)
2.  教育委員会の担当者が相談員に申請者情報を共有し、相談対応を依頼する(郵送)
3.  相談員が面談の日程を申請者と調整し、教育委員会の担当者に連絡する(電話)
4.  教育委員会の担当者が相談員派遣依頼書を相談員に、会場使用依頼書を学校に送付(FAX)
5.  申請者と相談員で面談を実施(オフライン)
6.  相談員が面談結果を教育委員会担当者に報告(メール)
7.  報告を受けて教育委員会が学びの場を判断、通知(郵送)

従来、このフローでは大量の書類とアナログな連絡対応が課題となっていました。具体的には申請者が最初に提出する申込書も1、2枚ではなく最大4種類あり、記入する量によっては全部で10枚を超えることもあります。

実際に使用されている申請書


その後発生する申請者⇔相談員⇔学校のやり取りも郵送や電話など複数のツールでしており、一つひとつのやりとりに時間を要していました。就学相談と教育相談はそれぞれ年間300件ほど発生する業務で、データ入力や書類の送付、やり取りを含めた業務時間は350時間にのぼっていました。

そこで、FormBridgeとkViewerとPrintCreatorを導入し、各フローのオンライン化を推進しました。まず、FormBridgeで郵送対応していた各書類をフォーム化しました。
 

複数の紙が必要だった申請書もフォーム化


また、kViewerでは、学校が会場使用依頼の受付状況を確認できるようにしました。
そのため、就学・教育相談の電子申し込みや各種報告がオンラインで完結できるようになったことはもちろん、面談を行うための使用を依頼する「会場使用依頼」も、教育委員会の担当者が直接オンラインからフォーム経由で申し込めるようになりました。これにより、相談に使用する教室の使用依頼のための調整の手間を省き、自動化できるようになったため、紙のやり取りにかかっていた時間の大幅カットを実現しています。

学校側はkViewerにより会場使用依頼書をオンラインで確認できるようになった


さらに、kViewerのリストビュー機能で、相談員は申請者や面談内容に関する情報をオンラインで安全に確認できるようになりました。PrintCreatorも連携することで、相談員派遣依頼書を帳票化してダウンロードすることも可能です。

結果、導入後の業務時間は199.98時間と4割削減することに成功しました。中間作業にかかる時間が短縮された分、最終的な学びの場の判断までにかかる時間も早くなりました。

支援金申請対応で苦労していたデータ入力もFormBridgeでスムーズに


 旭川市はFormBridgeによる支援金申請対応の作業効率の改善にも着手しています。

物価高騰に伴う支援金等は、国の施策に合わせてスピード感を持って実施しなくてはいけません。しかし、紙の申請書を提出してもらい、データ入力・管理をExcelで対応していたため、入力の手間はもちろん、転記ミスがないようダブルチェックを行うことによる作業時間のロスが課題となっており、喫緊で解決する必要がありました。

そこで、申請書をFormBridgeでフォームに置き換え、申請されたデータはそのままkintoneに登録されるようにアプリを開発しています。また、このフォームには郵便番号を入力すれば自動で住所が反映されるカスタマイズを実装しています(参考:郵便番号から住所自動入力!kintoneで回答者の手間・ミス削減│kintoneapp BLOG)。わかりやすいテンプレートを作ることで、申請業務が必要になったときにスピーディーにkintoneで運用できるように準備を進めています。
※カスタマイズは、サポート対象外となります

作成中の支援金の申請フォームのテンプレート


決裁に時間がかかるホームページ更新のかわりにkViewerでリアルタイム公開


 市町村ならではの業務に「住民の生活に関わる情報の発信」があります。
例えば、災害や道路管理、野生動物の出没などによる危険箇所の情報収集やデータ管理においては、何度も同じデータを手入力する手間があるほか、データの形式や保存方法、文言の表記などがバラバラであるため、欲しい情報を探すのが大変という課題がありました。

さらに、住民にこのような生活に関わる情報を周知するためのホームページ更新は、担当者の更新作業に約10分かかり、公開するための決裁には複数の職員が関わるため、転記ミスなどの確認が終わるまでに1〜2時間待つことがあります。決裁者が席を外している場合はそれ以上時間がかかることもあり、リアルタイムな情報発信に課題がありました。

このような場面でkintoneを導入すれば、まず、紙やHDDなどの様々な保存媒体にバラバラに管理されていた情報を一元管理することができるため、データの検索・抽出精度の向上を実現することができます。

さらに、収集した情報をまとめたkintoneのマスタデータとkViewerを連携させれば、住民が必要な情報をリアルタイムで確認できるようになり、ホームページ公開用の別システムでの原稿作成作業や転記ミスを防止するための確認作業などが不要になります。公開にかかっていた作業時間を丸ごとなくすことができるため、kViewerを活用した情報発信に向けての準備を進めているそうです。



FormBridgeで粗大ごみ戸別収集申し込みに対応することで年間2,000時間以上の業務時間削減と試算


 旭川市は多くの住民の生活に密着した業務の効率化も目指し、現在数多くのアプリ開発および実用化を進行させています。その一つが粗大ごみの戸別収集申し込みです。

現在、粗大ごみの戸別収集は電話での申し込みが必要になります。平日9時から17時と限られた時間で受け付けていますが、毎日約400件の電話対応が発生し、それをオペレーター5人で対応する必要があります。

また、収集後の作業指示書のチェックや変更になったデータ等を現行の受付システムに入力する手間が発生するため、1日あたり約1時間の作業時間がかかっています。

実際に使用されている紙の作業指示書


そこで、FormBridgeで戸別回収申し込みのフォーム化を進めています。kViewerのMyページビューと連携することで、フォームで申し込まれた情報を使ってkintoneアプリの中で日付計算により回収日を計算します。その計算結果を粗大ごみの回収日としてMyページビューで表示できるようなアプリを開発しています。
これにより、戸別回収を申し込んだ方は、FormBridgeとkViewerの連携により、一連の流れで回収日も確認することができるようになります。

先行して開発している剪定枝・落ち葉の戸別収集申込フォーム


フォームの仕様は住民の利便性を重視したものを想定しており、収集して欲しいごみのカテゴリも簡単に選べるような仕様が実装される予定です。

品目・数量を選択するフォーム


ごみの戸別収集申込のオンライン化により、オペレーターが対応する電話の数が2割減ると仮定した場合、年間2000時間以上の作業時間が削減されると試算されており、かなりインパクトの大きな施策になります。

「日本一のデジタル都市」を目指すため、さらなるkintone活用デジタル人材育成に注力したい


 行財政改革推進部が主導する旭川市のDX推進はまだ始まったばかりです。今後の展望について、水沢氏より「業務改善の幅をさらに広げるためにkMailerも導入したいですし、全庁的なデジタル人材の育成にも力を入れていきたいです」と明確なビジョンとともに回答いただきました。

kMailerでは住民に対するプッシュ型のコミュニケーションや、一斉送信で対応できる業務連絡での活用を想定されています。具体的には市内の施設やイベントなどの予約システムをFormBridge、kViewerをベースに構築し、利用者データベースと紐づくkMailerによる効果的なイベント告知を検討しています。

従来のメール配信の仕組みでは、宛先の抽出や確認、本文の作成などの中間作業に年間100時間以上費やしていたものもあります。また、kintoneのプロセス管理機能と組み合わせれば、申請や申し込みに対する作業だけでなく、監査業務など幅広い活用が考えられるそうです。

また、業務改善を支援する民間企業と連携し、既存業務の課題点を洗い出したりkintoneアプリ作成などの勉強会を行ったりすることでデジタル人材育成を進めています。赤坂氏は、実際に業務の課題を解決するために勉強会に参加し、kintoneアプリ作成の実装を進めている職員の一人です。

赤坂氏は観光スポーツ交流部スポーツ課に所属しており、学校施設スポーツ開放事業を担当しています。その利用登録申請受付業務について、他の庁内業務同様に紙の書類や郵送対応が多く、時間がかかることに課題を感じていたそうです。赤坂氏は「民間企業と連携することでkintoneの使い方やアプリ構築にまつわる質問が気軽にできるので、少しずつkintoneやFormBridgeなどの連携サービスに慣れることができました」と述べました。

赤坂氏は業務改善を目指し、紙の書類をFormBridgeのフォームに置き換えて、kViewerで体育館の予約状況をリアルタイムで確認できるような仕組みを現在構築中とのことで、人材育成の成果が早くも出ていました。


赤坂氏が構築中のkViewer


水沢氏は「赤坂さんやこれまで紹介したアプリを作成した職員のように、kintoneを活用した業務改善アイディアを自発的に出せる職員を増やしたいですね。市役所は、どんな時でも住民サービスを確実に提供しなければならず、個人情報などの取り扱いに注意しながら大量の情報を処理しなければならない難しさなどから、新しい取り組みに及び腰になりがちです。しかし、だからこそ、『どんどんやろう』という雰囲気や活力を若手職員と一緒に生み出すのが大事だなと思っています」と締めくくりました。

記事公開日:2024年2月26日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります